第2話 黒岩医師

同じ症状に苦しむ人たちと、僕はSNSのDMで連絡を取り合った。共通していたのは、皆ロキソニンや処方された鎮痛薬で痛みを“誤魔化している”ということ。そして——誰一人として完治した者はいなかった。


だが話を重ねるうちに、ある“奇妙な共通点”が浮かび上がってきた。

——頭痛に悩まされているのは、「医療関係」の知識パックをレンタルした人たちだけ。


レンタルしたのは、医学、薬学、看護、そうした専門領域。法律や語学といった他分野では、こうした症状は報告されていない。

僕たちは知らない何かに、巻き込まれているのかもしれない。


そんなある日、テレビから聞き慣れた名前が流れてきた。

権威ある医師——黒岩重蔵。

医療界では知らぬ者はいないと言われる人物だった。


「ブレインレンタルなんて、無意味な技術だよ。」

画面の中の黒岩は、冷たく笑った。

「借り物の知識で試験を受けたところで、自分の無知を世間にさらしているだけだ。知識は経験と共に積み上げるものだ。脳に“知識”だけを詰め込んでも、人間にはなれないよ。」


それは単なる批判だったのか、それとも——何かを知っている者の言葉だったのか。

僕の中に、答えのない疑念だけが広がっていった。

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