第4話 三大問題

「──ちょっと待てよ。国から? 出題? 」


 話が大きすぎて頭が追い付かない。


「うん。なんでも建国七百年を記念した催しで、国が出題をしているらしいよ」

「建国記念の催し? で、数術の出題?」


 催しは人を集めるためにやるものだ。だったら、参加できる人が多いものを開催するのが普通だ。数術の問題を出すのは、適当じゃないように感じる。やるなら、くじ引きみたいな、手軽で気軽なものの方が良いに決まっている。いくらこの円形都市コンパスでは数術が盛んだと言っても、ちょっと人を選びすぎる気がする。

 アルは、そんな私の疑問を感じ取ったようだ。


「変だなって、思った?」

「うん。やるなら、もっと手軽なものだろ、って思った」

「やっぱりそうだよね。──実は、ここだけの話だけど」


 アルは小声で言った。


「国が、数術の精鋭を集めるらしいよ」

「なんでまた?」

「理由まではちょっと分からないかな。でも、建国七百年でしょ。たぶんだけど、国としては何か大きなことをやって、権力を示したいんだと思う」

「そこで数術に白羽の矢がたった、と」

「高度な数術はそのまま、高度な文明につながるからね」


 なるほど。言われてみればそうだ。

 強い国には、その後ろには必ず高度な数術がある。国の水準を上げることが目的ならば、数術に力を入れることは十分に考えられる。

 だとすればこの方法は確かに効果的かもしれない。

 ごくまれにだが、在野でも能力の高い数術師がいる。そういった人材を掘り起こすことが目的なら、悪くはないのかもしれない。

 でも、だ。


「でもさ。具体的に何に力を入れていくんだろう? ありきたりだけど、正確な円周率を求める、とか? 」


 アルは、笑顔を作った。


「だから、見に行くんだよ」

「──ああ、なるほど。国から出される問題を見れば、今回の出題の意図がわかるかもしれない、ってことか」

「そういうこと」

「わかった。それは確かにおもしろそうだ。善は急げ、だ。行こう」



 □◆ ◇■ □◆ ◇■ □◆ ◇■ □◆ ◇■



 この円形都市コンパスは名前の通り円形をしている。その中央部分には中央広場センターと呼ばれる大きな広場がある。

 その中央広場センターのど真ん中。そこに屋根をつけただけの仮設の小屋がつくられていて、その左右二か所に問題が掲示してあった。小屋のなかでは、長机が二つ設置してあり、それぞれが解答者の対応をしていた。ほとんど数術勝負のような形式だ。

 仮設所につくと、すぐに問題を確認した。


 国からの出題。

 精鋭を集める。

 権力を示すような、大きな成果。


 その答えの一端をつかめるかもしれない。

 そんな期待を胸に、その問題を見た。


「──おい。冗談だろ!?」


 おもわず漏れた言葉。

 口の端が、震えながら吊り上がる。

 愉快か、期待か。

 あるいは畏怖か。


 問題には、こう書いてあった。


【半径1の円がある。この円をぴったり覆う正方形を「大きい正方形」。この円にぴったり収まる正方形を「小さい正方形」、とする。大きい正方形は、小さい正方形の何倍か?】


 問題自体は難しくない。

 図形問題として初歩と言っても良い。

 だが、この問題には、難易度以上の意味があった。

 その意味を、アルは静かに笑いながら言った。


「未解決問題のひとつ、円積問題の第一歩だね」

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