第3話 解答

" さて、見た感じでは手も足も出ないな。

 19を2、4、5で割る、なんてそもそもが無理な話だ。

 最初に何をすればいいのか。一手目すらわからない。お手上げ状態だ "


 ふぃ、と一度息をつく。

 思考を白紙に戻して、別の道筋を探る。


" 困ったときは基本に戻る、が数術の定跡だ。19という数字からは、先に進めそうにないな。手を付けるなら別のところか。他は──。


 問題を最初から読み直す。

 まだ手を付けていない部分を探す。

 それはすぐに見つかった。

" ──分数か 。

 1/2 。なにかになる数を2つに分けて、そのうちの1つのこと。

 1/4 も同じだ。なにかを4つに分けて、そのうちの1つ。

 1/5 は5つに分けたうちの1つ。

 でも、もとの数が 19 でこれを2つや4つや5つに分けることはできない。

 分数の部分も手がかりになりそうにない。──これも手詰まりか "


 ため息を一つ。

 また白紙に戻す。

 問題文からにあった、すべての手掛かりを使い切った。もう、

何も残ってはいない。

 そんな状況に、口の端が吊り上がる。

 解けなさそうな問題ほど、面白いものはないから。


" ──問題文に手掛かりがないなら、逆だ。答えから逆算する。

 1/2 と 1/4 と 1/5 に分けられる数を見つける。

 それは難しくない。3つの分数を通分すればいい。

 1/2 = 10/20

 1/4 = 5/20

 1/5 = 4/20

 分母は 20 だ。だから 20 であれば、1/2 と 1/4 と 1/5 に分けられる。

 そして、1/2 と 1/4 と 1/5 の合計は──。19/20 か "


 その数字が浮かんだ瞬間、すべてがつながった。

 答えを捕まえた。

 そんな感覚があった。


" 19枚の金貨を分けることはできない。でもそこに1枚追加して、 20枚の金貨にすれば、分けることができる。20枚の金貨を 1/2 、 1/4 、 1/5 にすると19枚の金貨が分けられることになる。そうして、残った1枚を取り戻せば、19枚の金貨を分けれたことになる。

 目に見えないものを見て、不可能を可能にする。実に数術らしい考え方だ。なかなか面白い問題だった "


 難問を解き終わり、鼻を鳴らす。

 それから、アルのところに戻った。


「けっこう面白い問題だったぜ」

「ジオが褒めるなんてよっぽどだね。どんな問題?」


 私はアルに問題を教えた。それから、つい聞いてしまった。


「答え、分かる?」


 アルは小さく笑うと、財布から硬貨を一枚取り出して答えた。

 これはきっと、聞いた瞬間に答えが分かった、というやつだ。

 

「やるじゃん」

「うん。答えは知ってたからね」

「なんだ、知ってたのか」

「数に関する研究をしている人なら、だいたいは知ってる問題なんじゃないかな。その筋の人には有名な問題だよ」


 そう言って、アルは少し笑った。


「せっかくだから、もっとワクワクする問題を解きに行かない?」

「この問題も結構よかったけど、それ以上?」

「うん。出題者が、すこしスゴいんだ」

「誰だよ?」


 アルの返事は、確かに衝撃的だった。


「──この国だよ」

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