第11話
「完璧だ。俺はあんたが気に入ったぜ。
また来るよ。」
老いた冒険者は、北大陸系の訛りが交じった口調で告げながら、商品の
代金が詰まった皮袋を2つコルテンに手渡した
オーダーメイド品なため、相応の金額が詰まっている
皮袋を受け取ったコルテンは、深々と一礼した
「貴方様の冒険に幸あらんことを」
立ち去っていく老いた冒険者に向けて、コルテンは一礼したまま
そう呟いた
老いた冒険者の耳には、その呟きは届いてはいない
安全地帯内で各々に休息を取り、聞き耳を立てていた幾数人の
冒険者達は絶句した表情を浮かべたままだ。
『迷宮商人』から購入していったオーダーメイド商品は、それ相応の
高値が付く事を理解しているからだ
だが、この安全地帯内にいる大多数の冒険者達は誰一人も表情を
変えていない所を見ると、驚いている冒険者達はこの“迷宮”の
5階層より階層下に潜り始めてから日が浅いか、もしくは他の“迷宮”から
移ってきた冒険者達なのだろう
“古代の都”ヴィンダムの“迷宮の5階層より階層下、この地下7階層まで
潜れる実力者であれば、『迷宮商人』に関しては多少の事では動じない
しかし、この“古代の都”ヴィンダムの5階層より下の迷宮に潜れる
冒険者達でも その実力はピンからキリまでだ
年老いた冒険者の姿が消えると同時に、 “唖然”していた地下7階層に
潜る事がやっとだった
冒険者達の中で静かな囁きが拡がっていく
「なんだよあの爺さんといい、その前の冒険者パーティーといい・・・」
冒険者の一人がそう呟くと、周囲にいた冒険者も 独り言のように次々に
口を開き始める。
「・・・・少なくとも見た限りで手渡した金額は、金貨900枚は優に
超えていた」
隣にいた年長の冒険者がそう呟くと、囁いていた冒険者達は絶句した
“迷宮”の探索を生業としている者達にとって、例え“実力“のある
冒険者でもその経済力は日々の糧を得るのが精一杯だ。
冒険者の中でも高位にランク付けされている者達は、仲間内やギルド等から
仕事を受けつつ“迷宮”で得た収入を資産として蓄えている者もいる。
だが、身に付けた装備やアイテム類の購入、宿屋代の支払い等で稼ぎの
ほとんどは吹き飛び 貯蓄する余裕など無い者が大半なのだ
当然の事だが、駆け出しから抜け出せない冒険者達にとってはその金額は
夢のような金額である。
「傭兵みたいな連中も、それぐらいの金額を支払ってたな・・・・
このヴィンダムには、金貨900枚なんぞいつでも支払える同業者が
ロゴロいるってのか」
頬骨の浮き出た冒険者が、独り言のように呟いた。
“古代の都”ヴィンダムの『迷宮』の地下7階層を潜れる中堅冒険者パーティーで
あっても、地下10階の未探索区域へ脚を踏み入れたのは誰一人いない
地下8階からの階層は“深層”と呼ばれ、そこに巣食う魔物達は上層階で
遭遇する数々の魔物とは比べ物にならないほど別格の強さを誇る
冒険者同士の噂や情報交換の中では、地下9階の階層からは得体の知れない
異形のものや異世界から召喚された魔神、“常闇の向こう側”
―――俗に言う魔界から悪魔の軍勢がゴロゴロ湧いて出てくると言われている
また、稀にではあるが地下7階層や8階層でそうそう遭遇してはいけない
“魔の者”との遭遇例もあった。
過去に事例があるにも拘らず、未だ発見されていない隠し部屋や抜け道も
多数存在すると言われている
囁いている冒険者達がいる間にも、また別の冒険者パーティーがコルテンへ
歩み寄っていた
冒険者パーティーメンバーは、全員が獣人種族で統一されいる。
その中で一人、背に大型のウォーアックスを担いでいた美しい毛並みを
持つ女性が口を開いた
「オーダーメイド商品を注文したいのだが、詳しい話を聞かせてほしい」
その女性は獣人種族特有の尖り耳が印象的だ
「お伺いします
武器、防具、護符、魔道具等、ご希望の商品はございますか?」
コルテンが営業スマイルを浮かべながらそう尋ねると、 背に
ウォーアックスを担いでいた女性は、
その美しい毛並みの尻尾を左右に揺らしながら 口を開いた
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