【完結】寝取られ動画でガッツポーズした俺、壊れかけた清楚な本命を純愛で救うと決めた――演技のデートのつもりだったのに、いつの間にかラブコメ始まってたんだが?
第45話 あれから一ヶ月――それぞれの後日談。そして、詩乃とのクリスマスデート
第45話 あれから一ヶ月――それぞれの後日談。そして、詩乃とのクリスマスデート
今日は12月24日、クリスマスイヴ。
街を白く染める静かな雪の中、俺は詩乃との待ち合わせのため、駅前に立っている。
あれから、一か月が経った。
神崎は、停学処分を受けたあと、間もなく自主退学した。
学校からの正式な発表はなかったが、生徒の間では噂が広まり、もう誰も彼が戻ってくるとは思っていない。
今は、警察での取り調べが進んでいて、『未成年者への交際DVや精神的支配』の件で、家庭裁判所へ送致された。
現在、家庭裁判所による調査が行われており、詩乃や美咲だけでなく、過去に交際してきた女性たちのことも考慮されているという。
過去、全てを踏まえると、保護観察や少年院送致の可能性が高いと聞いた。
神崎の両親は、会議室で見た息子の本性に愕然としていた。
神崎光は幼い頃からわがままで、気に入らない事があればすぐに逆上する子だったという。
両親はそんな神崎に対しても、ただ盲目的に愛し、許してきた。
その一点では確かに過ちだっただろう。
だが、どれほど過保護に育てられようと、他人を傷つけ、壊し続けたのは神崎自身の意志だ。
両親は“育て方を誤った”という一点については責任を免れない。
だが、他人の心を壊してきた罪までは背負う必要はない。
それは神崎光がただ一人、負うべきものだ。
過保護の果てに育ったのが“他人を壊す怪物”だった以上、神崎光に同情の余地などない。
他人を壊し続けた末に、最後に壊したのは自分を信じていた両親との絆だった。
救われるべきは彼ではなく、彼が壊してきた人間たちだ。
神崎の両親もそれを理解しているのだろう。
学校や教育委員会と連携し、『今後一切、月森詩乃に近づかせない』という接近禁止の仮処分を申し立てた。
さらに、弁護士を通して月森家に正式な謝罪文が届けられた。
『今後一切、神崎光が、月森詩乃さんやこれまでに関わった被害者に二度と接触しないよう、親として責任をもって監督し続けます』と。
また、弁護士を通して詩乃だけでなく、これまでに神崎に傷つけられたすべての人々へも謝罪文と補償が届けられたという。
治療費や慰謝料という形ではあるが、“泣き寝入りで終わらずにすんだ”という事実は、被害者たちにとってわずかな救いになったはずだ。
退学後、神崎はかつての友人たちからも距離を置かれ、誰も彼をかばう者はいなくなった。
名前を出されるだけで空気が凍るほど、学校でも触れてはいけない存在になっていた。
裁判所による接近禁止命令は、つい先日、本決定になった。
詩乃は、少しだけ安心した表情を見せたが、それでも不安は完全には拭えないようだった。
「大丈夫だよ」
俺がそう言って、そっと彼女の手を握った時、詩乃は静かに笑った。
「社会も、先生も、家族も、もう味方してくれてる。そして、俺もこれからもずっと隣にいる」
そう言った俺の言葉に、詩乃は小さく頷いてくれた。
◇ ◇ ◇
桐山にはちゃんと礼を言った。
あいつには本当によく助けてもらった。
約束通り、回転寿司を奢ったんだが……意外とよく食うんだよな、あいつ。
財布がスッカラカンになったけど、まぁ、笑って済ませられる良い思い出だ。
雪村先生は、今回の件について真剣に反省していた。
『教師として、見抜けなかったのが悔しい』と詩乃に、頭を下げて謝ったらしい。
でも詩乃は、はっきりと言ったんだ。
『先生のおかげで私は助かったんです。本当にありがとうございました』と。
先生は今、以前よりも生徒に寄り添う姿勢を強めている。
きっと、彼女の言葉が届いたんだと思う。
美咲とは、あれから会っていない。
神崎の件で警察からの接触はあったはずだが、俺には詳しいことは分からない。
たぶん、もう二度と会うことはないだろう。
でも、彼女が過去の傷から解放されて、いつか幸せになってくれたら――それだけでいい。
◇ ◇ ◇
「や、お待たせ!」
そんな声がして、振り返った。
――柚葉だった。
「……なんでお前がここに?」
「なんでって。お姉ちゃんが“明日デートなんだ”って超うれしそうに言ってたからさ。
“どうせ直哉のことだから、絶対一時間前には来てる“って読んで来た。
そんで、からかいに来ましたー!」
……この妹、相変わらずだな。
いつも通りの調子で笑う柚葉に、俺もつい肩の力が抜ける。
肩をすくめる俺に、柚葉はくすっと笑った。
「寒い中で待ってたら風邪引くよ。
でもそうなったら、お姉ちゃんに看病してもらえるチャンスかも?」
「詩乃が枕元でおかゆ作ってくれて、食べさせてくれて、“もう無茶しないでくださいね”とか言ってくれて――
あかん! もうそれ風邪どころか俺の命が持たん!! てかお前だよ! 俺にそんな業の深いビジョン植え付けてんの!」
軽口の応酬。
そのテンポはどこか懐かしかった。
「最近、詩乃の様子さ、なんか柔らかくなった気がするな」
俺がふとそう言うと、柚葉は小さく頷いた。
「うん。鏡見て、髪整えてる時間がちょっと長くなったの」
「え、そこ?」
「そこだよ。そういうとこに、心の余裕って出るから」
柚葉は当たり前のように言う。
「お姉ちゃん、最近ほんとに変わったよ。前は自分のこと全然気にしなかったのに、
今じゃ“今日どんな服にしよう”とか一時間悩んでるし」
「へぇ、それは良かった」
詩乃がそう変わってくれたなら嬉しい限りだ。
柚葉は、ほんの少しだけ優しい顔になった。
「直哉、ありがとね。……お姉ちゃん、もう大丈夫だよ」
「それでも、また何かあったら、俺が支える」
それを聞いた柚葉が、くすっと笑う。
「ちょっとキザすぎなー。
でも……いいと思うよ、そういうの」
そう言って、柚葉は少しだけ顔を伏せた。
そこから、急に空気が変わった。
「あのさ……。これだけ聞いときたいんだ」
柚葉の目は真剣だった。
だから俺も、冗談で返すことなんてできなかった。
「もしもなんだけど。
私が先に直哉と出会ってて……。
私が……お姉ちゃんみたいに、誰かに壊されそうになってたら……」
少しだけ声が震えていた。
「その時は、私のこと……救ってくれた、かな?」
一瞬、言葉に詰まった。
けど、それ以上に、迷いはなかった。
「ああ、きっと俺はお前を救おうとしてたと思う。
たとえ、まだお前の性格をよく知らなかったとしても。
柚葉、お前は、それだけ魅力的な女の子だから」
自分で言ってて、なんだか恥ずかしい。
けど、全部本音だった。
それを聞いた柚葉は、ほんの一瞬だけ目を見開いて――すぐに、少し笑ってごまかした。
「――なーんて、意味ないか。そんな話。
直哉に一番お似合いなのはお姉ちゃんだよ。
姉バカの私から見て、断言できる」
柚葉は少し寂しげな表情をしたが、
その目は姉を思う温かさに溢れていた。
「じゃ、デート楽しんできてね!
これからも私は、お姉ちゃんののろけ話を聞きながら2人の幸せ願ってるからさ!」
そのまま、柚葉は背を向けて、歩き去っていった。
振り返らない柚葉の背中を見送りながら、俺は胸の中でそっと呟いた。
――ありがとう、柚葉。お前のおかげで、俺はここまで来られた。
必ず、詩乃を幸せにするからな。
◇ ◇ ◇
「お待たせしました」
その声に振り返った瞬間、心臓のリズムが一段階上がるのを感じた。
「……っ」
またオシャレしてきやがってこの人は。
冬っぽい白のコートに、落ち着いた色のマフラー。
ゆるく巻かれた銀髪の隙間から覗く耳も、ほんのり赤くなってて。
「……可愛すぎかよ」
「えっ……そ、そんなに……ですか?」
詩乃が目をぱちくりさせて、頬を赤く染めて、うつむいた。
やばい、今の声に出てた!? 俺の脳内、最近セキュリティガバガバすぎんか?
「す、すまん。思っただけだったんだけど、言葉が勝手に……」
「も、もっと恥ずかしいです……!」
顔を真っ赤にしながら、でも、なんかすごく嬉しそうで――
ああ、ほんとに。
以前が嘘みたいだ。
神崎のことも全部終わって。
詩乃は今、ちゃんと笑える人になった。
無理やりじゃなくて、自然に。
それが、たまらなく嬉しかった。
「じゃ、行くか。詩乃」
「はい。行きましょう」
詩乃が俺の手にふっと視線を落とす。
「……あの、手……つないでも、いいですか?」
「……もうつないでるだろ」
俺がそう返すと、詩乃はくすっと笑って、指をきゅっと絡めてきた
その繋いだ手が、雪の冷たさを忘れさせてくれるほど、あたたかかった。
今日という日が、詩乃にとって、悲しい過去を上書きできる一日になりますように――
俺は、そんな願いを込めて、彼女の手を少しだけ強く握りしめた。
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