第47話 ドストエフスキー3

自分の過去世がドストエフスキーだと閃いてから、詳しく伝記を調べ直した。

図書館で資料を読むうちに、負の部分がはっきりしてきた。共通点もみつかる。


1821年にドストエフスキーは、ロシアのモスクワで、7人兄妹の次男として生まれた。レニングラードで成長する。商家生まれで陽気な母マリアは、彼が15歳の

とき、37歳で死亡する。


父ミハイルは貴族で医師だった。奇妙に厳格で、神経質な上に猜(さい)疑心が強く、世間知らずで、無知な男だった。酒癖が悪く、アルコール中毒だった父が、医師を辞め、自分の持ち村の農奴の娘に、子供を産ませてしまった。怒った農奴たちに襲われ、喉に布切れを詰めこまれて、ドストエフスキーが17歳のときに横死した。


ここまで読んだとき、龍はドストエフスキーとの共通点に、ショックを受ける。

ミハイルが辿った運命は、龍の父治とまったく同じだった。父小諸治も酒癖が悪かった。多くの人に嫌われていた。神社の世話人仲間に、殴り殺されてしまう。


結局神社に居た全員が非業(ごう)の死を遂げてしまった。龍がドストエフスキーの生まれかわりであるのなら、父治もミハイルの生まれかわりである可能性が高い。ここまで治とミハイルが似ていて、しかも殺されているところまで同じという共通点が重なってくると、疑いようがない。


父は過去世で農奴たちに殺されてしまったにも関わらず、彼の魂はなにも学んでいない。今世でも同じ過ちを繰り返す失態を重ねている。二度もつづけて無意味で不毛な人生を送ってしまった。


父の訃(ふ)報(ほう)を聞いたときから、ドストエフスキーは癲(てん)癇(かん)になった。ずっと父を憎み

『死んで欲しい』

と願っていた。それが現実になったショックは大きく、罪の意識から衝撃を受けとめきれなかった。それが癲癇の引き金になった。

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