第19話 踏切 3
強烈なショックを受けていた。
『ずっと意識がなかった。どうしてなのだろう』
純は無口である。おしゃべりではない。
『わかってくれないことは誰にもいわない』
あの踏切はこの地域でも
《魔の踏切》
としてこの8年間ずっと有名だった。
この7年のあいだに毎年踏切事故で人が亡くなっている。
死者が死者を招きよせると恐れられていた。
今回もし彼が事故に遭っていたとしたら、8人目になるところだった。
この踏切のことは啓もみんなも知っている。
純は昨年の夏、雷が落ちる現場を目撃した。そのとき
《事故でけがをする人》《死んでしまう人》
《無傷でいられる人》《事故にさえあわない人》
この《運命》
といわれている運の差はどこにあるのだろうと疑問に思ったことがあった。
今まさにそのとおりのことが再び起ってしまった。
真剣に考えなければいけないと腹をくくっていたはずなのに
『雷の教訓を活(い)かせていなかった』
そのことにいやおうなしに気づかされた。
ショックだった。本気で向き合わざるを得ない緊急事態が起きた。
この4つの中の《無傷でいられる人》になることはできた。
けれども《事故にさえあわない人》ではなかった。
『どうして事故にあいそうになったのだろう』
純はずっと考えつづけた。
『死ななければならないほどの悪いことを、
無意識のうちになにかしていたのだろうか』
死に値することとはいったいなんだろう。
思いあたることはなにもない。
考えてわかるような簡単なことではなさそうである。
悪いことをしていないから死なずに助けられた。
『誰がぼくを殺そうとし、誰が助けてくれたのか』
姉が冥界(めいかい)から手をのばして助けてくれたのだろうか。
けれどもすでに死んでいる姉が頭に浮かんだということは、
あのとき一瞬でもあの世とつながった。
そう思っただけで、純はゾクっと身震いがした。
『もしかして姉がぼくをあの世へ引きずりこもうとしたのだろうか』
『まさかそれはない』
犯人は誰でヒーローは誰なのか。
その問題を自分で解決しなければ気がすまなかった。
『いったいなにが起ったのだろう』
純はずっと悩みつづけた。
あのとき純は意識がなかった。
みえない悪霊に憑(と)りつかれ、電車で殺されそうになった。
6人も殺してきた悪霊の仕業(しわざ)である。
悪霊はひとりなのか、複数なのか、それとも全員なのかわからない。
純はどの悪霊とも面識がなかった。
どこになんの接点があったんだろう。
知らない悪霊などとどこでつながる可能性があったのだろうか。
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