第17話 閑話
「くっ!早く抜け出して、あんたを倒してやるわ!」
「芋虫みてーに転がった状態で凄まれてもナァ?なんとも思わねぇーヨ。」
回転椅子でクルクルと回りながら悦がアイラを見つめる。
「ふぅふぅ……」
暫くして疲労が溜まったのか、呼吸荒く地面に顔をつけた。
「なぁ、折角だしお喋りでもしようぜ?」
「………いいわ、乗った。」
アイラは情報を聞き出すチャンスだと、悦の方に向き直った。
「あーアイラだっけか?何年だ?」
「?」
「魔法少女。」
「え?えーと……………もうすぐで四年ってとこかしら。」
「へぇ?そりゃすごい。」
「確かに、ここまで生き残ってるのは珍しいかもね。」
アイラはそう言いながら、散っていった仲間に思い馳せていた。
「あぁ、なるほど。」
悦は満足そうに頷くと、右手に武骨な片手剣を産み出した。しかし、それはただの剣ではなく、マナを纏い光っていた。
「っ!?何を!」
「いやぁ、長年の疑問が解消されてスッキリしたからよぉ。御礼に……殺してやろうと思ってな。」
「な!?あんたイカれてるわね!」
「あぁ、よく言われる。」
アイラとの問答の間も、悦は一歩また一歩とアイラに近付いていく。
「お喋りはどうしたの!長年の疑問って何よ!殺すなら最後に納得してから死にたいわよ!」
「ハァー………………」
アイラが半ば涙目で訴えると、悦はつまらなそうにその場にしゃがみ、片手剣を肩に乗せた。
「あのなあ………そんな調子に乗った悪役じゃぁねぇーんだからんなこたァするわけないだろ?」
「チッ」
「………まだ元気みてぇだなぁ?」
満足そうに悦が笑うと、立ち上がって片手剣を振り下ろす。
「間に合ったか……………」
しかし、その片手剣を防ぐ影。
「ソーン!」
「…………ギャハハッ!運良すぎ!
精霊会議は終わったのか?」
「あぁ、異変には敏感なものでね。今回が最速記録さ。アイラ、すまない。ここからは俺と共に!」
「あ、あぁ!」
アイラがソーンに手を伸ばすと、ソーンが二刀流の剣に変化した。そしてその剣はひとりでに動き始めると、椛の蔦を容易く切り裂いた。
「へぇ?やるねぇ。」
「余裕はそこまでよ!」
「我ら共に有る限り!」
「「誰にも負けるつもりはない!」」
「トップの力、思い知らせて上げるわっ!」
「精霊を武器に………か。なるほど、お前らは少し特殊なんだな。」
顎に手を当てて考え込む悦の隙を見逃すまいと、アイラは地面を蹴った。
「何をぶつぶつ言ってるの!そんなんじゃ、避けられないわよ!………っ!?」
「遅いからぶつぶつ言えるんだよバァ~カ。」
しかしそれを瞬時に跳躍で避けると、先程の回転椅子に座り直した。
「舐めるなぁっ!」
アイラの右の一閃を悦は座ったまま片手剣で受け止めると、アイラの持つ剣に顔を近付けた。
「お前、ソーンだっけか?少し話そうぜ?」
「フン!戦いながらなら構わんぞ!だが、それを敗けの理由にしないことだな!」
「するかよ。」
一、二とぶつかった後、アイラの二振りの振り下ろしを正面から受け止めた。
「なぁ、ソーン。お前は約定を破ったか?」
「な!?」
「ソーン?キャッ!?」
一瞬ブレたソーンの隙を逃がすまいと力でアイラ共々後ろに弾き飛ばす。
徐に悦は立ち上がると、全身にマナを巡らせていく。
「貴様、なぜそれを?人が口にして良いことでは……っ!……アイアン…………………」
「大正解。ようやく気付いたか。」
悦はこうしなければバレないという事実を知れて満足そうに頷いた。
「…………ならば、ここで貴様を絶つ。恨んでくれるなよ。」
「恨む?ギャハハハッ!それは私に勝ってから言いな?というか、破ったんなら戦う意味はあるのかよ?」
「すまないが、俺自身納得はしていなくとも我が剣は女王に捧げている。貴様を見逃す道理はない。」
「ちょっと!私を置いてきぼりにしないでよ!?一体なんの話をしているの!?」
「雑談さ。」
「ギャッハッハッハッハッ!おらぁ!」
「アイラ!」
「もう!」
再び始まった斬り合いは、悦の優勢のまま勝負がついた。
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