第11話 ダブルハイヤー
「今日は骨折で休んでいた桃瀬さんが戻ってきました。皆は桃瀬さんが授業に追い付けるようにサポートや気を配ってあげてくださいね。」
とある中学校の教室にて、担任の教員の言葉の締めにて朝のホームルームが終わると、件の桃瀬に人が集まってきた。
「大丈夫だった?」
「怪我もういいの?」
心配そうに話しかけてくるクラスメートに桃瀬は狼狽えたようにしながらも、再会を喜ぶように一人一人に言葉を掛けていった。
「う、うん!もうこの通り!元気元気!」
クラスのムードメーカーの復活とあって、教室では一月振りの活気に満ち溢れていた。
そんな光景を、つまらなそうに黒髪をハーフアップにした少女が見つめていた。
「早く終わらないかしら…………」
ハーフアップの少女は、段々と桃瀬が自分の席に近付いてきていることに気付き、黙々と席を立って用の無いトイレに向かった。
「なぁ茨ヨォ。」
いつものログハウスにて、悦が不思議そうに話しかけた。
「……………………………………………………………………………………何かしら?」
柚子をベースにしたチョコレートタルトをフォークで優雅に口に運び、紅茶を一飲みしてから聞き返した。
すぐに返事が返ってこないのはいつものことのため、悦は特に何も言わなくなっていた。
「なぁんか肌艶良くネェカ?」
椅子に逆に座りながら頬杖をついたまま尋ねた。
「ウフフ、そういうところ大好きよ。前のあなたの戦利品をお裾分けしてもらったわ?」
嬉しそうに微笑んだ後、クッキーを口に運んだ。
「は?………………アァ成る程ナ。
前から思ってたけどヨォ、強くなって茨は何を目指すんだ?」
お裾分けにしては取りすぎではと考えながら、茨から提供された紅茶を飲む。
「お、うま。」
「ダージリンのセカンドよ。まぁ、あなたに言っても分からないでしょうけど。」
「おう、知らん。別に知らなくても良いしな。」
悦はそう言うと、残りを一気に飲み干した。
「それで、強さを追い求める理由、ね。」
「そうそうそれ。んで?」
「そんなものないわ。強いて言えば自己をグレードアップさせることを躊躇う人間がいるのかと、逆に問いたくなるわね。」
「強いての割に語気が強くて草。」
悦がニヤニヤと笑うと、テレビから気になる言葉が聞こえてきた。
『近日、開催されるイギリスでの魔法少女パーティーの日程が決まりました。』
「あ?そんなのあんのか?」
「知らないのかしら?物事を知らなすぎるのは考え物よ。
魔法少女パーティーは3日間開催されていて、最終日は一般の人も抽選チケットで入れるわ。ある意味、一般人がなんの危険もなく魔法少女に会える唯一の機会と言えるわね。」
「はぇー?なんの危険もなく、ねぇ?」
悦がとても嬉しそうに問い掛けた。
「えぇ、なんせ各国の著名な魔法少女がいて、なおかつ厳重な守衛が配備されているもの。
世界一安全と謳っているわよ?」
椛もまた、アルカイックスマイルで返した。
「そりゃぁまた。」
「そうね?言っておくけど入場者は個人情報を殆んどバレるわよ。」
まるで行くのが当然とばかりに情報を補足する。
「ケヒ……殴り込めば良い話だロ?」
こちらも行くのが当然だという表情で考えを提案した。
「あと、転移も使えないしイギリスにはマナを感知できる魔法少女がいるわよ。」
「ゲェ、マジかよ…………マナ感知ズルすぎー。」
お手上げだと言わんばかりに両手を後頭部に回す。
「そうね、確か世界で三人。………いえ、二人だったわね。」
「はぁーん、レアってことか。」
「えぇ、是非とも私の養分になって欲しかったわ。本当に。私にもマナが感知出来るかもしれないから。」
「まぁ確かに?とゆーかなんで過去形?」
「言葉のあやよ。」
含みのある笑いを浮かべ、椛は紅茶を口に運んだ。
「ハァーン、じゃあ指を咥えて見てるかにゃー。」
つまらなそうに口を尖らせながら悦が呟いた。
「あら?ちょっと変わるけど、方法ならあるわよ。」
椛が紅茶を飲みきった後、片眼を開けて悦を見据える。
「にゃにぃ!?」
「乗るかしら?」
「ケヘヘ、乗らない方がおかしいダロ!」
椛の言葉に悦はサムズアップで返した。
「それならまだまだ話は終わらないわね。新しい紅茶を淹れましょう。」
「ニヒヒ、次はなんだ?」
「次は────
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