第6話 ラックハット 3

「ちょっとバランス!カップ麺一つ分って言ったでしょ!?」

「はい、そうですが?」

「六分!六分だったわよ!?」

「私の食への拘りを否定しないでください。」

「そんなこと言ってないわよ!て言うか伸ばすの!?麺はカタメでしょ!」

「やれやれ、分かってない。」


 

 うぅ、目が……まだ見えないぃ………

 少し離れた所で二人が無事なのはあの会話で分かりますけど、バーサークデーモンのマナが見かりません…………


 魔法少女であるならば、身体の何処かにあるジュエルからマナが漏れ出るはずなのですがぁ…………


 最初ダークサイドを探ってた時も授能を使用するまで魔法少女だと気付けませんでした…………

 私も勘が鈍ってきたのでしょうかぁ………………


「…………トリックトラップ。」



 とりあえず、これで牽制ぐらいにはなるはず………




「あ!?」

「どうしました?スター。やっとカタメは邪道だと…」

「ちっがーう!救援出した魔法少女!あんた巻き込んでないわよね!?」

「…………あ。」

「あ、じゃないわよ!?とりあえず探し……」



 グロウスターが言葉を続ける前に、私のトラップに敵が引っ掛かりました!

 それに気付いた二人はマナを集中させて戦闘態勢に入りました。けど、あの攻撃を直撃して生きているなんて……………


 私がそう思っていると、クライムバランスによって巻き起こっていた砂煙が横に斬れた。


「ギャハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!」


 右手を刃物に代えたバーサークデーモンが笑いながら砂煙を払うと、右手を元に戻した。



「アイツ………!」

「驚愕です。最高値の業を示してなお私の前に立っていたのはあなたが初めてです。」

「ギャハ?惚れたかァ?」

「残念、嫌悪が募りました。」

   

 やっぱり期待されてるだけありますぅ………直ぐ様クライムバランスがバーサークデーモンを封じ込めましたぁ…………やっぱり私って落ちこぼれ………


「バランス、稼いで。」

「了解。」


 グロウスターが拳に自分の吐息を吹き掛けて、ゆっくりと力強く握り混む。



「っ!?」


 驚きで声が出掛けましたぁ…………さっきよりもマナが十倍にまで膨らみましたぁ………



「ギャハハハ!強いねぇ?」

「さっきみたいに触ってくれると思わないことね。」

「フェ~?にゃんのこと~?」

「ハアァァァァァ───スターダスト・インパクト!」


 それは流れ星を幻視させる、希望の一撃。

 フルーツシャワーを連想させる最強の一撃。



「ギャハハハハハハハッ!それにゃコイツがお似合いだぜ?」


 バーサークデーモンがスターダスト・インパクトに向けて生成したのは大きな鉄のかたまり。

 いや、アイアンメイデンとも言うべきか。


「ソ、レは!!」

「ギャハハハ!食らえ鉄処女!」


 バーサークデーモンは唯一動く顔をおぞましい笑みに変え、アイアンメイデンが開いたと同時にスターの一撃が衝突した。

 普通なら、アイアンメイデンなんて貫いて終わり、そう思うが……………


「ギャハハッ!」

「え…………」

「嘘………………………」


 バーサークデーモンが鋭利なギザ歯を浮かべる先には、何もなかった。

 人が持つことすら不可能な大きさのアイアンメイデンも、人一人に向けるにはあまりにも質量が桁違いなグロウスターの一撃も、きれいさっぱり無くなっていた。


「私の、一撃が……………」


 あの瞬間、グロウスターの一撃はあったけど、一瞬にして消えた…………?マナを関知できる私でも、突然消えた用にしか知覚出来なかったなんて………


「ギャハハハハハハハ!最高ダゼェ!?グロウスター!」

「撤退を推奨します。スター。」

「でもっ!」

「仇討ちは諦めて、救援者も見つからない以上逃げ出したと思う他ありません。」

「……クッ!」


 良い判断ですぅ………正直言えばあんな化物の戦いに割ってはいれませんでしたぁ………私ってホントダメな子…………


 グロウスターとクライムバランスが飛翔した後、バーサークデーモンの動きに注視する。

 ここで、逃がすくらいしないと………!


「ギャハハ?暖まって来たんだ……………逃がすわきゃ無いだろう?」


 バーサークデーモンのマナが!

 本気のグロウスター、いやフルーツシャワーすら越えてる!?


 バーサークデーモンは力強く地面を蹴り、二人の元へと向かわんとしていた。


「さ、させませんよぉ!トリックトラップ!」

「っ!さっきのもお前かぁ…………ケヒ、ヒヒヒヒ!」

「ここ、これ以上、仲間を死なせはしません!」

「ギャハハハハハハハッ!私を止められるならなぁ!」


 バーサークデーモンが激しく、そして確実に私を屠る一撃を放ってきた。

 私はマナを関知できる。だからこそ分かる。これを受けたら死ぬし、避けても二秒後には死んでるって。

 だから────


「幸福の黄色き帽よ、我が心を使用した最期の祈りを。

 フォビドゥン・ハット」



 被っていた帽子を天に掲げ、呪文を唱える。


 これこそ私の授能の最高出力。

 効果は───




「ハット!」

「どうしたの?シャワー。私みたいな落ちこぼれに構ってる暇あるの?」

「ちょっと!幼馴染みなんだからもっとこう、あるでしょ!?」

「ないですよぉ、それで?」

「あんたの授能聞いたけどマジで言ってる!?」

「あぁ、まぁ。使いづらいですが…………」

「駄目!絶対使わないで!使ったら私死ぬまで怨んでやる!」

「なんですかそれぇ……というか使いませんよぉ。私だって命は惜しいですからぁ………

 なら、あなたも私より先に死んだら死ぬまで怨んでやりますぅ!」

「えぇ!もちろんよ!」








「ごめん柚…………でも、お互い死ぬから恨みっこなしだね………」



 私の命を代償にした禁忌の法。

 対象のマナを一月封印、阻害する。

 フフフ………最期の最期にNo.1とNo.2に恩を作っちゃいましたぁ!

 感謝、してくれたら嬉しいなぁ…………

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