第4話 ラックハット
「それじゃあ、富羽さんまた来週。」
「バイト頑張ってねぇー。」
「うん、皆もまた来週。」
にこやかに微笑む水色の髪をサイドアップにした女学生は、別れた友人達の姿が見えなくなったとたん、纏っていたオーラが変わった。
「けへ、今日は何して遊ぼうかなぁ?」
先程まで口をなるべく開かないように喋っていた女学生は、まるで解放されたことを喜ぶようにその特徴的なギザ歯を剥き出しにした。
「けへへ、久し振りにランダムで行くか。ペッ!」
草臥れた木造の家に無造作に鞄と脱ぎ捨てた制服を乱雑に置き、玄関で裸体を晒しながら口の中から指の第一間接サイズの物体を掌の上に吐き出した。
それは真っ黒に染まった宝石だった。
「救済よ…断罪よ……我が手に宿るは無窮の渇望ッ!」
黒く染まった宝石を地面に叩きつけて足で踏み潰す。すると、砕けて破片となった宝石が黒き光となって女学生を包み込んでいく。
「ケヒ、アァァァ………今日は恵がメロンパンくれたから調子が良いぜ………」
狂神こと、悦が心底嬉しそうに笑うと、手を前にかざして全身のマナを集め始めた。
「サァて……ランダム転移!」
右手を引っ掻くようなポーズにして、空に無理やり穴を空ける。
そのまま飛び込むと、目の前には広がるのは夕焼けをバックにした、廃病院だった。
「チッ、外れかァ?」
悦が残念そうに頭をかいていると、背後に何かを感じて半身をズラした。
その瞬間、ズラす前の場所に綺麗な銃痕が地面についていた。
「ギャハハハッ!当たり当たり大当たりィッ!
いるンだろおォ!?こりゃ神様の善行を重ねる私へのご褒美ダァなぁ!?」
悦が眼をガン開きにして叫ぶと、視線の先から四つの影、それも魔法少女達が現れた。
しかし、そんな彼女らの側に精霊がおらず、宝石は黒く染まっていないものの、無色透明だった。
「最悪…………」
「ギャハハハッ!まさかダークサイドがいるとはなぁ!最高ダゼェ!」
「折角の御茶会が台無しね。」
「うわ、一番関わりたくない奴…………」
「只でさえ忙しいってのに………」
「オイオイオイオイオーイィッ!歓迎してくれや!茶会してンだろ?ティーカップくらいだせやぁ!」
悦がそう叫びながら四人の前に瞬時に現れると、鉄パイプに変化させた右足を挨拶代わりに横一閃。
「イカれた変態に構ってる暇無いのよ!」
金髪の髪を僅かに揺らしながら、全員の前に盾を生成した。
「ギャハッ!復讐計画は順調でちゅかぁ!?ってな!」
悦が小馬鹿にしたように叫ぶと、空中で一回転しながら今度は左足を約六メートルもの槍に代えて上から下に振り下ろす。
「間に合わ……っ!」
「任せて。」
金髪が慌てるも、それを落ち着かせるようにオレンジ髪が冷静に呟くと、片手のみでそれを掴んだ。
「アニャ?強いねぇ?それなら魔法少女とか政府にも勝てちゃうかもねぇ?」
「あら?協力してくれるなら紅茶を出してあげるわよ?」
「ギャハッ!ゴメン遊ばせデスわ?そういうの、バカみたいで笑っちゃうのよ、サッ!」
「ぐっ!?」
「援護しますっ!」
「弾け跳べ!」
残りの二人から同時に雷と水流の攻撃がされるが、悦はニヤリと笑って、その場を離れた。
「今の内に!」
「およよよ?逃げるのかなぁ?」
「フン、吠え面かしら?良い気味ね。」
オレンジ髪はそう言い残して四人同時に転移していった。
「ケッつまんねぇの。まぁ良いか……………」
悦はそう呟くと、ある一点を指で狙ってデコピンをした。そのデコピンをした瞬間、その指から何かが真横に飛び、とある樹木を貫通して倒した。
「次は当てるぜ?」
「こ、ここ降参ですッ!やめてくださぁーい!」
すると、そんな樹木の中から手品師のような格好をした魔法少女が現れた。
「ケヒ、遊ぼうゼ?」
「あ、あわわわわわ……………だ、脱兎のごとく逃げるが吉なりですぅー!」
「追いかけっこカァ…………大好きダゼェッ!」
「ヒイィィィィッ!誰かお助けぇー!」
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