第2話 フルーツシャワー 

 私の名前は桃瀬光莉です!

 今日から魔法少女キュアザワンダーとして、本格的に活動したいと思います! 

 精霊のキュアちゃんから貰った授能で、先輩達の傷を癒すのが私の役目です!

 授能から一月…………!学校は休学からの魔法少女見習いとしての過酷な訓練!とってもキツかったけど、憧れの魔法少女として精一杯頑張りたいです!

 それに、回復授能は珍しいみたいで期待の新人扱いで正直照れちゃいます!

 でも!だからこそその期待に応えたいのです!




 私は国で全国を管理している監視カメラがある部屋で、待機中です。

 危険なところや、ヘルプの入った現場に転移するまで私はこの安全な場所に座ってるしかないのです。

 貴重だからと、持て囃されるのは吝かではありませんが、少しズルい気がします…………


 転移の原理ですが、私達に力を授けてくれた精霊ちゃん達の種族パワーらしいです。

 説明されましたけど、よく分かりませんでした。




「ヘルプ入りました!現場はフルーツシャワーです!」

「キュアザワンダー!訓練通り、リラックスだ。」

「はい!キュアザワンダー、出動します!キュアちゃん!」

「はいなはいな。」


 天使の羽が生えた猫の姿をしたキュアちゃんが、マナを使ってゲートを開いた。

 マナは私達魔法少女の力の源で、授能力を高める効果があるのです!


「それじゃ、頑張るのよぉ~。」

「はい!」

 キュアちゃんが優しく言うと、私の付けていた髪留めの宝石に入った。この宝石は精霊との絆の証。

 深まれば深まるほど澄んだように輝きを放つ。

 精霊ちゃん達は私達に力を授けてる状態だから、戦闘では邪魔にならないように宝石の中に隠れて、私達魔法少女にマナを分けてくれているのです!




 作成されたゲートを抜けると、まず傷だらけのフルーツシャワーさんが腕を抑えながら大型の怪物と対峙していました!総じてイクリプスと呼ばれるそれは、間近で見ると迫力が段違いでした………………



「はっ!フルーツシャワーさん!今治します!」

 私の授能、回復でじわじわと傷を塞いでいく。

「っ!あなたが噂の、ね。」

「え?」

「良いわ!私の戦い方、よく見ておきなさい!」

「は、はい!」


 フルーツシャワーさんはとても有名な人で、戦い方がシンプルかつ派手なことで人気が高い。


「オレンジジャブッ!」


 フルーツシャワーさんの右手がオレンジ色の水を纏い、イクリプスの顔目掛けて打つ。


「Ghaaaaaaa!」


 イクリプスが顔を覆い、それを見たフルーツシャワーさんが、着地後すぐに直進。


 今繰り出されたオレンジジャブは、蜜柑の汁を纏わせた一撃で、目のあるイクリプスは大抵これで怯んでしまう。

 案外人と構造は同じなのかと感心する。



「グレープブローッ!」


 右手に複数纏わせたブドウを、右膝を上げて右肘をぶつけた衝撃で空に放出し、パンチの動作に連動してブドウの粒が高速でイクリプスに着弾した。


 流れるような一連の動きに感動していると、バックステップで私の隣に立った。


「フルーツシャワーさん、流石です!」

「いいえ、それはまだ早いわ。」

「え?」

「私がなんで、傷だらけだったと思う?」


 フルーツシャワーさんの言葉に応える前に、無傷のイクリプスが咆哮を上げた。



「嘘!?」

「ホントよ。ジリ貧でどうしようかと思ったけど、あなたがいるのなら、大技を使えるわ。

ちゃんと回復してよね?」

「もちろんです!精一杯、回復します!」

「えぇ、その意気、よ!」


 フルーツシャワーさんは声をあげて地面を蹴った。



「バナナショットッ!」


 両手から生み出した特大バナナを射出し、こちらに向かわんとしていたイクリプスが盛大につんのめる。



「畳み掛けるわッ!ドリアンアッパーッ!」


 右手に鋭利なトゲを付けて、丁度転んでいたイクリプスの顎と首の根本に叩き込んだ。


「Gyagaaaaaa!!!!」


 イクリプスは悲痛な叫びと共に勢いで後ろに倒れ込む。



「大技行くわッ!ジャックフルーツ・インパクトッ!」


 右手に巨大な果物が生成され、フルーツシャワーさんは重力のままイクリプスの脳天を震わせた。


「やった!」

「ぎゃっ!?」

「っ!フルーツシャワーさん!」


 イクリプスが完全に倒れる寸前、イクリプスの大きな右手が、まるでハエを追い払うようにしてフルーツシャワーさんを私の方まで飛ばした。


「大丈夫ですか!?」

「え、えぇ………………でも倒したわ…………

 うっ、やっぱり右手がヤバいわね。強いけど、負担がデカすぎるわ。」

「そんな、真っ赤に!?今すぐ治しますので!」

 私は回復を続けながら、イクリプスの方をチラリと向く。そこにはピクリとも動かない、巨体があるだけだった。

「よ、良かったぁ…………」

「そうね、でも気を抜いちゃダメよ?まだここは戦場なのだから。」

「そ、そうですね…………ハハハ、すみません……」

「構わないわ、次から気を付け………ラズベリーマッハストレートッ!」


 フルーツシャワーさんが上を確認しつつそう言うと、赤い拳は私を捉えて─────


 少し遠くに飛ばされ気が動転しながらも、冷静にあまり痛くない、ノックバックが強い一撃だと思いつつ起き上がると、目の前にはフルーツシャワーさんではなく、知らない二人の魔法少女がいた。


 砂塵の中から見えたのは水色の髪の魔法少女と黒髪の魔法少女。

 この人達も助けに来てくれたのかな?

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