Blow off some steam
麝香連理
第1話 フライイエロー
『今、魔法少女フライイエローの苦しそうな声が聞こえます!現場では既に音声しか拾えず、現場スタッフとの連絡も取れません!
しかし、それでも私達は彼女たちの奮闘を最後まで聞く責務があるのです!
私達の代わりに苦しむ少女への、償いとして!』
質素なログハウスに、動画サイトに先日あげられた動画が再生されている。
「ギャハハハッ!聞く責務だってサ!コイツからしたら絶対聞かれたくないだろぅねぇ!」
水色の髪をサイドアップにした少女は、見た目ではイメージ出来ないようなギザ歯を剥き出しにして、笑い転げた。
「はいはい、電気あんまでオホ声出してるJKの声に感じ入ってる世間が滑稽って話でしょ?もう何回目よ。」
黒髪をハーフアップにしたお淑やかな少女は、溜め息を付きながら呆れたように言葉を紡いだ。
「もおぅー!そっちは居なかったから分かんないだろうけどサ!あれは爆笑必至!私なんて録音させるために態々マイクだけ壊さないで頑張って笑い声出さなかったんだから!」
話の内容では想像も付かないほど、呑気な二人の少女は、変わらず流れる動画に耳を傾ける。
『頑張れ!頑張れ!フライイエローッ!
私達は応援することしかッ!─────そんな…』
アナウンサーの叫びも虚しく、グチャリという生きている人間が出してはいけない音が響き、実況のように熱く語っていたアナウンサーが顔面蒼白で尻餅を付く。
ここで、今話題の動画は終了した。
「ギャハハハハハッ!聞いた!?聞いた!?あの音!それにこいつのこのアホヅラ!
サイッコーッ!」
水色髪の少女は目に涙を浮かべて自分の太股を叩きながら、ソファの上を笑い転げた。
ログハウスがギシギシと揺れ、ソファの埃が舞うなかでも、黒髪の少女は微動だにせず、紅茶を楽しんでいた。
「あなたは発情期の獣以下並に狂ってるけど、物に当たらないその姿勢は好きよ。」
「ゑ?告白?辞めてよ、私の将来の夢は年上の男を縛って肉棒蹴って遊ぶんだから。」
「ホント、そこに関しては反吐が出るくらい気色悪いわね。どこで、そこまで歪んだのかしら。」
「けへへ!イージャンイージャン?私ら狂った化物同士サ!」
「ハァ……それで?結局何回も同じ話繰り返されたけど、何が言いたかったわけ?」
「ニャハ!このグチャリ、どンな風か聞きたいっしょ?」
「どうぞ。」
水色髪の少女提案に、特に思案すること無く返す。
「ギャハ、まずさぁ、足離したらピクピク痙攣しながら唾液垂らして漏らしたんだぜ!アイツ!
笑っちまうよなぁ!あの色は、昨日蜜柑食ったぜ?季節じゃねぇーけど!それに………」
「パス。」
「っと、いやぁ、あの顔は至上最悪のブスでサァ!カメラ一個くらい……」
「パス。」
「っと、結局ブス過ぎたしなんか飽きたから、足裏に日本刀生やして、優し~くあんましてやった所にブッ刺して脳髄噴き出させてやったよ!
全身の色んな液体でグチャグチャでサァ!写真にでも残しとけりゃ、物好きに売れたかもってナッ!
ギャハハハハハハハッ!」
「う~ん、ダージリンティーとよく合うお茶請けだったわ。」
「ギャハッ!気に入ってくれて嬉しいゼッ!」
机の上に置かれていたスコーンを無造作に鷲掴みし、口の中に放り込む。
「にょ!中々うめぇじゃねぇーか!」
「えぇ、茶葉のついでに取ってきました。」
「ありゃ?でも前より食感ちげぇな?また店変えたんか?」
「当たり前でしょう?前のスコーンのお店の茶葉は私が根こそぎ貰ったので、潰れました。」
「ギャハッ!盗んで潰したの間違いだろ?」
「そうとも、とれるわね。」
黒髪の少女は優雅に微笑むと、食器を片して伸びをした。
「んん………そろそろお開きとしましょう。残りのスコーンはあげます。」
「お、やりぃ!これで晩御飯は浮いたな!」
「本当に、人って貧乏が極まると狂うのかしら?私あなたしか知らないから判断できないわ。」
「ホレホレ、んなこたぁ言ってねぇーでよ、御嬢様は怖~いパパとの約束の門限過ぎちゃうぞ~?」
「えぇ、全く。いつまで子供扱いなのかしらね。
それじゃ、また来週。」
「おう、また土曜日に暴れて日曜日にお茶会なぁー!」
黒髪の少女、小野江(おのえ)椛(もみじ)
WANTEDNAME 茨姫orプラントクイーン
授能 植物を操る
授けた精霊:エターナルグリーン(授けた後に椛の授能により吸収され養分となった)
水色髪の少女、冨羽(とば)悦(えつ)
WANTEDNAME 狂神orバーサークデーモン
授能 全身に生物を殺傷するに値する物を生成する
授けた精霊:アイアン(珍しい生き物という理由で晩御飯になった)
煮込んだら柔っこくなって旨かったぞ! by悦
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