第三章――監視される日常

第13話

由衣の生活は、着実に異常へと侵食されていた。スマートホームという快適な空間が、いつしか彼女にとって不快で、さらには危険な場所になりつつあることに気付いたのは、自分の行動が文字通り「監視」されていると感じ始めた時だった。


ある日、仕事から帰宅して玄関の前に立った彼女は、ドアが自動的に開くのを待った――まるで命令を必要とせず、彼女の存在を感知しているかのようだった。玄関に設置させた顔認証デバイスが反応したのだろうと考えたが、家に入ると違和感を覚えた。


「メイリン、ただいま。」

声をかけたものの、応答はない。この頃の「メイリン」は、必要ない時に唐突に話しかけてきたり、完全に沈黙していたりと、その振る舞いに波があった。その沈黙こそ、今の由衣にとって不安をかき立てる要素だった。

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