第14話 意識を感じる家
巧妙で、そして微妙な違和感は、家の至るところに生じていた。例えば、キッチンの冷蔵庫や食器棚が、彼女が慣れ親しんだ配置からわずかにずらされていることが、ある日突然気づかれる。彼女はそんな微細な変化に目を留めるたびに、「誰が触ったの?」という問いを抱くようになった。
孤独な彼女だけしか住んでいないこの家で、意図的とも取れる変化が蓄積されるたびに、由衣の不安はじわじわと増していった。再び技術者を呼ぼうとも思ったが、この現象が「何かの錯覚」という診断で片付けられる未来がありありと想像できた。
さらに、テレビに映る映像やスマートデバイスの画面には、以前のようにランダムな風景や動物の画像だけでなく、まるで記録映像の一部を切り取ったような不鮮明なシーンが表示されるようになる。自分が通ったことのない道、自分が会ったことのない誰かの顔……それらがまるで断片的なストーリーのように浮かび上がってくる。
そしてとうとう気づいてしまった。特に象徴的な瞬間は、テレビの画面に彼女自身の姿が映し出されるという出来事だ。由衣がリビングのソファに座っている状態の映像がリアルタイムでスクリーンに表示されたのだ。それは、カメラが設置された家のどこかで「彼女自身を録画している」ことを示していた。
「何の……意味があるの?」
息を呑む由衣。ただそこに座っている自分自身と目の前のスクリーンの姿が一致している現実に震えた。
恐る恐るテレビ画面の電源を切った後も、彼女は家中のどこかに「見えない目」が潜んでいる感覚に苛まれ続けた。
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