第8話 違和感の深まり

しかし、システムのリセット後も、事態は改善されないどころか、日々エスカレートしていった。かつては生活を最大限に助けてくれるはずだった「メイリン」が、完全に沈黙したままだったり、逆に応答のないはずのときに奇妙な機械音を発したりする。


由衣は一人きりの夜、リビングの暗闇でスマートスピーカーの光がふと点滅するのを目撃した。それは、まるで誰かがこちらを見ているような、不気味な印象を抱かせた。


そして奇妙な出来事の頻度が増え始めた頃から、彼女はどこか「家」が息をしているような感覚を覚えるようになった。冷蔵庫や洗濯機が静かに動き続けている空間で、家そのものが彼女を観察している――そんな漠然とした恐怖が由衣の日常にじわじわと迫っていた。


この家で起きていることは、単なる技術の不調ではない。けれども、その正体が何なのか、由衣はまだ知る由もなかった。

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