第二章――侵食

第9話

スマートホームの環境が彼女に微かな恐怖を植え付けるようになってから、由衣の生活には薄暗い影が差し始めていた。普通に仕事に行き、同僚たちと談笑し、帰宅するーーそんな以前はごく当たり前だと思っていた日常が、今はどこかぎこちなく、安らぎというものを失いつつあった。


調査後、技術者による完全リセットが施された瞬間は、一瞬の解放感を彼女にもたらした。しかしそんな安心感は、わずか数日の平穏で終わりを告げる。

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