第6話 日常の侵食
その日以降、由衣の「いつも通り」だった生活が少しずつ崩れていった。最初こそ気のせいかとも思ったが、数日を過ぎる頃には明確な異常を感じざるを得なかった。
夜、リビングで映画を楽しんでいると、画面が突如として真っ黒になり、テレビ本体から耳障りなノイズ音が響いてきた。慌ててリモコンで電源を切ろうとすると、勝手に再起動し、なぜか動画ストリーミングではなく、彼女が一度も訪れた覚えのないウェブページが映し出された。画面には、動物の写真や、見覚えのない風景画像が表示されていた。何の脈絡もなく変わり続ける画像を見た由衣は背筋に寒気を覚え、テレビの電源ケーブルを抜いてその場を離れた。
また別の日には、設定温度23度で快適さを保っているはずのエアコンが、突如として35度に変更されていた。部屋の中が蒸し風呂のようになり、気づかないまま寝落ちしてしまった由衣は翌朝、頭痛に悩まされた。その際エアコンに声命令で指示を出そうとしたものの、またしても応答がない。
そして、彼女の思い出の写真アルバムが保存されたデジタルフレームにも奇妙な変化が現れた。家族旅行の写真や友人たちと撮った写真が流れるはずが、そこに突如見覚えのない他人の顔が写り込んでいたのだ。若い女性や年配の男性、どこかの風景、そして、不鮮明でどこを写したかわからない画像も混ざっていた。
「これはまずい……誰かが侵入している?」
その瞬間、由衣の心に浮かんだのは「ハッキング」という言葉だった。
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