第6話 長沢茜(下)

「茜、茜、茜」

フューズが地上を過去最高スピードで走る。

これなら世界陸上の人と渡り合えるんじゃないのかというスピード。

「茜!!」

問題の家に突入すると、茜がちょこんと座って泣いている。

「おにぃ…ちゃん?」

「茜……」

篤人は涙をポロリと落とす。

「会いたかった……」

「あ、あたしだって……っ」

茜がぺたりと地面に膝をつく。

「なんで…なんで会いに来てくれなかったの?」

「ごめん、仕事が忙しくて。でも、お前のことは忘れたことないよ」

「おにぃちゃん…もうっ、ありがとう……!!!!」

篤人はふっと笑って返した。

「あいたかったよ、茜」



「ふう…」

その時ジェニファーは梨位万田の茶を飲みながら窓を見つめていた。

「うまくやってるかなぁ……」

すると持っていた長沢茜の本がぶるっと振動する。

人生に記録すべきことが追加されたときには、振動して更新される。

「来たか」

ジェニファーは本を開いてみた。篤人と茜の再会が鮮明に書かれていた。

「よかった」

ジェニファーはまた窓を見る。

「みんなの人生を僕は変えるかもだけど、出来るだけ、自分の人生、皆が変えてほしい。それをわかってくれるのかな、みんなは」



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