篤人とフューズ

第4話 長沢茜(上)

「ふわあああ、おはよう。フューズ。」

「おはようございます,,,,ジェニファー様。」

「君も眠たそうだね。」

「心外です。あなたがなかなか起きなかったからそう見えるだけです。」

「ごめんなさいねっ。」


いつものようなヘンテコな話をしていると、ジェニファーが一時沈黙し、口を開いた。

「それにしても、今日は変な夢を見たなあ。」

「夢?」

「久しぶりに見たよ。小さな女の子が誘拐されて、エンエンと泣いているんだよ。神が長く、みつあみをして、赤いピアスをした女の子さ。」


ガタン。フューズがお盆を落とす。肩をプルプルさせながらそれを拾う。

「___ジェニファー様。早く書庫に向かいましょう。」

「え、あ、うん。」

ジェニファーは少し不思議になりながら、慌てて廊下に出る。


「ジェニファー様。あなたは知らないかもしれませんが、神の見る夢は、あの本のように助けを求めるものの夢なのです。なので、きっとその子も実際に誘拐されたのでしょう,,,,。」

「えええええっっ!?」


「で、でも。名前がわからないことには本も探せないよっ!?」

「名前は、わかります。」

「はっ!?」

フューズは重い口を開いた。

「__あかね、です。」


「早く、書庫に向かいましょう。」

「お、おう。」


書庫に向かうと、いつも通り点々と光る本。どうせ大したことない奴も多い。鬼ごっこで捕まりそう~。とか。


「名字はわかるかい?」

長沢茜ながさわあかね。小学校4年生。長野県中津市南町。」

「詳しっ、なんで知ってんの?あれ、長野ってもしかして,,,,。」


「僕の、地元です。」


ジェニファーは、とっさに悟っていた。確かフューズの元の名は長沢篤人ながさわあつと。天使はもとは人間の者が多く、人間の中の天使の才を見抜き、天使職へ着くとき名前が変わるのである。

ということは、この二人は同じ苗字である。


一人称が僕になったことさえも、隠れた気持ちが見える。

「茜ちゃんは、君の,,,,。」


「妹です。」


空気が凍り付く。その妹が誘拐されているのかもしれないのだ。

黙ってはいられないだろう。


「小学4年生ということは、ここにあるかと,,,,。あった。」

長沢茜と書かれた本を取り出すジェニファー。

フューズは思わず駆け寄る。

表紙の茜の写真を見る。


「おっきく、なったな。茜ぇ。」

フューズらしくない顔を見せる。今のフューズは篤人である。

ジェニファーに助けを求めるような視線を送る。

ジェニファーは、本を開く。



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