第13話
そして、来た道と同じルートでクライミングカーに乗って斜面を下り、ようやく彼女の車へと戻ってきた。
彼女は多少の疲れが見えたので、「戻りは運転するよ」と提案した。
彼女は安心したように「じゃあ、お願いしようかな」といい、助手席に乗り込んだ。
私は慣れていない車のため、最初は多少緊張したが、弥彦山スカイラインを下る頃には運転にも慣れてきた。
それからまた日本海を左手に見ながら海岸線沿いの道を新潟市へと戻っていった。
夕暮れが近づいていた。
私は彼女に「夕日を見よう」と提案し、彼女がこれを了解すると戻る道の途中にある砂浜の駐車場に車を停め、ふたりで車を降りた。
砂浜に降り立つと、目の前には大きな太陽がまもなく水平線に沈もうと降りていくところだった。
砂浜に流れ着いた
そうして、ふたりでぼんやりと海に沈む夕日を見つめた。
「今日はありがとう、本当に楽しかった」
私は彼女に顔を向けて言った。
「ううん、こちらこそ、来てくれてありがとう」
彼女もまた、私にそう返した。
「出会ってから、結構経ったね」
「うん、そうだね」
「飲みに行って、ディズニーも行った。……楽しかったなぁ」
「うん。わたしも、楽しかった」
そんなふうに、私は彼女との思い出を語った。それからこの夏の出来事も、正直に話したと思う。
そしてそんなこんながあり、私は改めて彼女のことを好きだと思った。会いたいと思った。辛い時に思い出すのは、彼女と過ごした日々だった。たしか、そんな順序で話したように思う。
そして「好きです」と、私は話の流れのままに彼女に気持ちを打ち明けた。
そのとき彼女はたしか、「え? そうだったの?」と、とても驚いていたことを覚えている。
「え、全然わかんなかった」
「わかんなかったんだ、そっか…」
「うん、全然」
「あのさ」
「はい」
「俺と、付き合って」
私は遠距離だとか、彼女が地元で就職していることだとか、そんなことはもう考えなかった。
今はただこの気持ちが、この胸の想いが、燻っていたあの頃とは確実に違う確かなものになっていた。そしてもうそれを自身の胸に仕舞っておくことなどできなかった。
「え、と、それは、うーん…」
「すぐに答え出してくれなくてもいいよ」
それは私の素直な気持ちだった。今すぐに決まらなくてもいい。とにかくまずは私の気持ちを知って欲しかったのだ。
だが彼女は「ごめんなさい」、そう言って目を伏せた。
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