第12話

 それから私たちは再び車に乗り、日本海の海岸線沿いの国道に車を走らせた。

 市街地を抜けると、車通りが一気に少なくなり、右手に日本海の水平線を見ながらひたすらに進んだ。

 真っ青な空が広がり、夏の澄んだ景色に日本海の水平線はよく映えていて、とても気分が良いものだと感じた。

 車の中でも彼女とはたくさんの話をした。

 思えば、彼女はいつもこうしてうんうんと私の話を聞き、程よく私に質問や新しい話題の提供をしてくれた。

 私に合わせてくれていたのだろうなとも思いつつ、私はそんな彼女と一緒にいることが心地よかった。

 やがて車は海沿いの道から横に坂道を登り始め、弥彦山やひこやまスカイラインに入った。

 ぐねぐねとした斜面を登り、途中にある駐車場まで辿り着いた。

 そこで私たちは車を降りた。

 車を降りると晴天をバックに、目の前には弥彦山パノラマタワーがそびえ立っていた。

 そこから私たちはクライミングカーという珍しい山の斜面を登るゴンドラのような乗り物に乗って、さらに山頂を目指した。

 クライミングカーを降りると、展望台のような場所に着いた。

 眼下にはパノラマに広がる壮観な日本海の景色があった。

 さっきまで走っていた海岸線の道路は、遥か遠く小さくなり、こんなに高いところまで登っていたのかと驚いた。

 私たちはさらに弥彦山ロープウェイに乗ることにし、ロープウェイで山の反対側に降り、彌彦神社やひこじんじゃを目指すことにした。

 弥彦山ロープウェイからの景色もまた素晴らしかった。ロープウェイの窓からは燕市つばめし三条市さんじょうしの広大な平野が広がり、平野の田畑の緑に頭上の大きな雲が影を落とし、ゆっくりと進んでいた。

 隣の彼女もまた、その壮大な景色に息を飲んでいた。

 ゆっくりとロープウェイは進み、高度を落としていき、やがて終着駅に到着した。

 ロープウェイを降り、しばらく道なりに歩いていくと彌彦神社に着いた。

 私と彼女は真っ赤ないち鳥居とりいをくぐり、参拝の前に手水舎てみずしゃで手を清めた。

 正しくは手と口を清めるらしいが、そこまでは行わなかった。

 それから二の鳥居をくぐり、拝殿はいでんに向かった。

 彌彦神社は森の中にあり、荘厳そうごんな趣きの神社だった。

 私と彼女はふたりで拝殿にお参りをした。


 彌彦神社では「二礼四拍手一礼にれいよんはくしゅいちれい」という独自の作法でするお参りがあるが、当時それをならって行ったかはもう覚えていなかった。

 今この文章も、必死に過去の記憶と記録と、地図アプリを元に辿りながら書き起こしている。

 その当時は、きっと彼女と一緒に居られることにふわふわとした気持ちで、地に足がついていなかったのだろうなと思う。

 それだけ彼女と巡ったこの新潟の旅は、私の青春の大きな1ページだったのだ。

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