第11話

 彼女とともに車を降り、マリンピア日本海の水族館へと向かった。

 入館の際のチケットはすぐに購入できた。

 水族館では日本海が近いことを売りにしていることもあり、日本海で見れる魚たちもたくさん展示されていた。

 私たちは入口から順に展示された魚たちを見てまわった。水族館は広々とした場所で、ところどころ屋外を通る作りだった。

 しばらく順路に沿って進むと、イルカのショーを行う場所に到着し、私たちはそのまま次に始まるイルカショーの回を見ることにした。

 イルカのショーは圧巻あっかんだった。イルカたちはプールを所狭しと泳ぎ回り、飛び跳ね、水しぶきをたくさん飛ばし、多才な芸の数々で観客たちを沸かせた。

 私と彼女も少しだけ水しぶきをかぶるはめになったが、それもまたふたりで笑い合い、楽しかった。

 イルカのショーを見終わると、私と彼女は早めの昼食をとりにレストランスペースへと向かった。

 私がレストランでから揚げ定食を頼むと、出てきたのは鳥の丸焼きかと思うような半身の鶏肉だった。

 その大きさと黒ぐろとした様子に、まるでタンドリーチキン定食だと私が言い、彼女は笑った。

 昼食を終え、再び水族館の続きを見てまわり、水族館をすべて満喫すると、私たちは水族館をあとにした。

 それから次の行き先をどうしようかと思っていたところ、私は目の前に広がる海を見てひらめいた。

「海に行ってみたい」と私は彼女へ提案した。

 彼女はこれを了解し、水族館からほど近い場所にある砂浜の海岸へと向かった。

 海岸の駐車場に車を停めると、私たちは砂浜へと降りた。

 それから私はサンダルを、彼女は靴を脱ぎ、ふたりで海に足をつけた。

 冷たい海水が押し寄せては足に絡みつき、気持ちよかった。

 まるで青春の1ページだなと思った。

 青春の1ページ、今まさに私は生涯しょうがい刻まれるであろう青春の中を生きているのかもしれないと、大袈裟おおげさではなくそう思った。

 また、砂浜で海に足をつけてはしゃぐ彼女を、とても愛おしく感じた。

 海から上がり、私が持ってきていたタオルで足を拭き、海岸に座って小休憩をとった。

 足を拭いたタオルを水で洗い、海岸の石垣に干していたが、夏の日差しのおかげであっという間に乾いてしまった。

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