第8話
ここで勇気を出して皆へ告白するなら、私は彼女とはまた別のところで、この夏の始め、失恋をした。
もちろん彼女はこの失恋には無関係だし、地元新潟へ戻った彼女は、私の中ではなかば思い出の女の子となりつつあった。そんな時に別の恋愛話題での失恋だ。
これもここでは深く触れないことにする。
だがこの失恋をきっかけに、私は寂しさから彼女へと久しぶりにメールを送った。
内容はなんてことはない、
元気にしているか、仕事は順調かという簡単な内容だった。
彼女からの返信はすぐに届いた。
元気にやっているが、仕事はまだまだ慣れないという旨のことが書かれていた。
そんな何気ない1通のメールが、なぜかその時の私にはとても温かく懐かしいもののように感じられた。
そうして思い出すのは、彼女と過ごした数少ない日々。
初めて話しかけたアルバイトの休憩室、二人で初めていった居酒屋、アルバイトへ通うバスの待ち合わせ、バスの中で話したこと、ディズニーランドでたくさん遊んだ日、彼女の大学を訪れた日。
どれもこれもその時の私には、まるで曇り空の割れ目から天使の
私は思いついたことを、そのままメールの返信に載せた。
「今度、新潟に行ってもいいかな」
すると、しばらくして彼女は返事をくれた。
「え、ほんとに? 来てくれるの?」
彼女は驚いた様子の文面で返信した。
私は「うん、もしよかったら新潟案内してほしい」、そう返した。
「全然いいよ、来てくれるの嬉しい」
彼女はそうやって私の新潟訪問を
それから二人で日程を決めた。
そうして、8月18日、私は彼女が住む新潟市へ訪れることが決まった。
先の失恋があったこともあり、私は彼女と会える新潟への旅をとても楽しみに思った。
そして私にはなかば確信があった。
ずっと中途半端なまま
いつからだろう、私はきっと彼女のことが好きだったのだ。
昔、若い時分に人生の先輩から「恋にタイミングなんてない」という言葉をもらったことがある。
だが、私は考える。
恋にはきっと、タイミングがある。そしてそれは、起こるべきタイミングで起こる。
私がこの気持ちに気付いたこのタイミングに、きっとなにか意味がある。
そう考えたとき、私は彼女へ告白するということは決まっていた。
うまくいくか、相手がどう思っているか、ましてや今は遠く離れた新潟の地にいる彼女だ、だがもはやそんなことは私にはちっぽけなものだった。
共に同じアルバイト先へ通い、ディズニーランドにまでふたりで行った、そんな彼女との思い出を、私は今や心の
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