第7話
私は彼女のことが好きなのかどうか、正直わからなかった。
彼女はかわいい人だし、素敵な人だ。会えばそれなりに話題は弾む。楽しく過ごすことができ、ディズニーランドのような場所にも一緒に行くことができる。
当時、職場の同僚の女子にそれを伝えたところ、「一緒にディズニー行って、付き合わない意味がわからない」と言われた。
世間一般ではそういうものなのだろう。
だが、私はこの中途半端な気持ちのまま、彼女へ告白することはできなかった。
ましてや、彼女は地元に戻り就職先まで決まっているのだ。
大学を卒業し、いる理由の無くなったこの地に、せっかく決まった就職先を蹴ってまで留まらせるほどの存在になれる覚悟も、地元に戻って仕事をしながら遠距離恋愛をさせるほどの勇気も、そのときの私は持ち合わせていなかった。
それに彼女自身がどう思っているかもわからないのに。そもそも彼女にそういった気持ちがなければ、それこそ私のただの
それから彼女とはメールをぽつりぽつりとするものの、やがて3月になった。
彼女からの提案で、再び同じアルバイトにシフトを入れようとなった。
そうしてその日、彼女と一緒に最後のアルバイトへ行った。
バス停で待ち合わせ、アルバイトの昼休憩ではともに座り話をして、アルバイトが終わると同じバスに乗って駅まで戻った。
それから、彼女とは簡単な別れの挨拶をした。
私は寂しさを抑えながら、彼女には「元気でね、またメールするよ」と伝えた。
彼女は「うん、わかった」と応える。
「新潟行くときは案内してね」
私は冗談はんぶんにそう
その時は、ほんの軽い気持ちでそう言った。
後に、それは現実のものとなり、その日は私にとって忘れられない一日になるのだとは、その時は思いもしなかった。
それから彼女は地元へと戻った。
いつが引越しだったのかは聞いていなかった。
私は私で、その3月はいろいろなことがあった。その点について、ここでは敢えて語らないが、ひとつ言えることは上記で書いたような彼女に対する気持ちが中途半端なままでいることの
もちろんそれは、恋愛に関するものだ。
それから夏が来るまで彼女と連絡をとることはしなくなった。
4月の頭にメールを数回やりとりしたが、それ以降、彼女も
また、私は私で3月のことから引き続きがあり、また彼女が生活圏内から居なくなったことで一種の諦めにも似た感情すら持っていたため、私から率先して連絡することもしなかった。
第一、連絡をしたところで、彼女は遠く地元、新潟の地にいるのだ。
今更、私になにができるだろうかと思った。
私にも生活があり、夢を追い、日々ぎりぎりの毎日を送っていた。
それと天秤にかけるには、中途半端な気持ちのまま彼女にいまの生活を
だがそんな日々も、やがて訪れた夏に一変する。
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