第6話
彼女とディズニーランドへ行った二日後、年末は地元へ帰省し、年越しをすることにした。
彼女とはあれからもメールをぽつりぽつりと続けた。
年越しは、
新しい年になり、地元の帰省を終え、関東に戻ってくると、再び現実に巻き戻されたようにアルバイトと音楽活動の日々が始まった。
そんな中、彼女からメールが届いた。
内容は、彼女が通う大学に遊びに来ないかというものだった。
私は通っていた地元の高校を卒業すると、アルバイトのため一年間空けて東京の専門学校へ通うため上京した。
専門を卒業すると、アルバイトを掛け持ちながら音楽活動を行う日々となったため、私には大学という場所がどんなところなのかわからなかった。
それにその学校からすれば私は完全部外者だ。
私が行っても大丈夫なのかと彼女へ聞き返した。
「大丈夫だよ、入るとき学生証とかもいちいち出さないから」
彼女はなんでもないことのように言った。
私には大学は行ってみたい憧れの場所でもあったため、それなら行ってみたいと答えた。
数日後、彼女と約束をして、彼女が通う大学の最寄り駅までやってきた。
駅で彼女と待ち合わせをし、駅からは徒歩で彼女の大学へと向かった。
大学の門を通る際、数名の学生たちとすれ違った。
一瞬、こちらを見られたような気がしたが、それに対し
校舎に入り、階段をあがった。
いくつかの教室を案内してもらい、廊下の窓から景色を眺めた。
私は今日、彼女にこの大学を案内された理由がわからなかった。
だが、私はそれを彼女に聞かなかった。先日、家に上がることを断られたこともあって、
短い彼女の大学案内は終わり、私は彼女と並んで大学を後にした。
それから帰りに夜ご飯を食べて帰ることにし、二人で駅前のファミリーレストランに入った。
ご飯を食べながら話をする中で、彼女は卒業後の話をはじめた。
「大学卒業したら、地元に帰って就職するんだよね」
「え? そうなんだ」
地元に帰る、という言葉に、多少なりとも私はショックを受けた。それはつまり、彼女が今住んでいるところから離れてしまうということだ。
「うん。地元の
「ぶつぐ?」
「そう、お葬式とか、仏壇とかに飾ったりするものを売るお店」
「へえ、そっか」
私はその仕事がどんな仕事なのか、とっさに思い浮かばなかった。普段、あまり馴染みのない世界の仕事だなと思った。
またそれ以上に、『新潟』というワードに、彼女との今後の距離を考えさせられていた。
東京と新潟では、気軽に会える距離ではないだろう。
そうなると、彼女と会うには新幹線などを使う必要がある。金銭的にも出費が大きくなりそうだ。
私たちはまだ付き合っていないし、今後どうなるかもわからなかったが、ただ『遠距離』という言葉が頭に浮かんだ。
ご飯を終え、私は電車に乗って彼女が住む最寄り駅まで送っていった。
別れ際、私は彼女に「またね」といった。それ以上はなにも言わなかった。
彼女もまた、それ以上なにかを伝える様子はなかった。
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