第4話

 さて、ここまで読んできたところで、そろそろ皆がこう思っていることだろう。


『夏関係ねーじゃん!』


 彼女とは秋に出会い、冬にディズニーと、今のところ夏の要素は皆無かいむ、そう思うのは当然だろう。

 だが、この物語はこれらの過程を経て、やがて夏に帰結きけつする。

 ここを省略すると、フレンチのフルコースでいきなりメインディッシュが出されるようなものだ。

 そこはいきなりステーキではなく、コース料理のレストランにきたと思って、もう少しお付き合いいただきたい。


 さて、その12月27日、私は早起きをしてシャワーを浴び、支度をする。

 家を出ると、彼女の住む最寄り駅まで、電車に乗りふた駅で降りた。

 彼女とは事前にバスの時間を調べ、それに合わせて待ち合わせ時間を決めて伝えていた。

 待ち合わせの駅前ロータリーに到着し、程なく彼女はやってきた。

 アルバイト先以外で顔を合わせるのは久しぶりだったため、なんだかいつもより緊張した。

 彼女は長袖のグレーのファー付きの上着、ショートのデニムパンツに黒いタイツを合わせ、ムートンブーツという出で立ちだった。

 いつものアルバイト先の姿よりも、多少オシャレをしてきてくれたのかなと思った。

 ふたりで予定したバスに乗り、私たちは舞浜へ向かった。

 途中の停車場は多かったが、バスに座っているだけで舞浜駅の1階ロータリーに到着した。

 舞浜駅でバスを降り、ロータリーから階段で2階にあがると、舞浜駅の改札前にでた。

 そこからボン・ヴォヤージュの前を通り、ディズニーランドへ向かった。

 ディズニーランドのチケットはまだ購入していなかったので、入り口のチケット売り場で購入する予定だった。

 ふたりでチケット売り場へ向かい歩いていくと、女の人が三人、なにやらこちらに向かって近づいてきて、いきなり話しかけられた。

「あの、チケットってもう持ってますか?」そう問いかけられる。

 私はまだ購入していないことを告げると、彼女たちは顔を見合わせ、なにやら嬉しそうな顔をし「よかったらこのチケット買いませんか!」と言った。

 事情を聞けば、今日4人で来るはずだったが、ひとりが体調不良のため来られなくなったらしかった。

 また、チケットは4枚セットのものを日付指定ですでに購入しており、そうなると1枚が無駄になってしまう。

 そのため、余ったチケットの買い手を探していたということだった。

 言い値をきくと、通常のチケットよりも破格の金額で譲るということだったので、私は彼女と目配せをし、これを購入することにした。

 こうして私たちはチケットも1枚通常より安く購入し、ディズニーランドへ入園することができた。

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