第3話

 やがて季節は12月になり、街はすっかりクリスマスシーズンになっていた。

 私は自身のバンド活動と、友人たちのバンドのスタッフと、アルバイトを掛け持ちながら相変わらずの日々を過ごしていた。

 そんな中、この12月の一番楽しみな目標ができていた。

 それはあの物流ぶつりゅう工場で出会った彼女と、ディズニーランドへ行こうという約束を取り付けたのだった。


 きっかけはアルバイトの昼休憩のとき、ふとしたことでディズニーの話題になった。

 その際、「そう言えば最寄り駅から舞浜まいはまに1本で行けるバス出てるよね」と私が口にしたことから。

「え、そうなんだ。住んでるけど、全然知らなかった」

 そんなひと言をきっかけに、私は話の流れのままに「じゃあ一緒にディズニーいく?」と彼女を誘った。

 それを彼女は「え、いきたい」とふたつ返事でOKした。

 それから私は彼女とディズニーランドへ行く日を心待ちに、日々のモチベーションとして過ごした。


 一般的に男女でディズニーランドにいくということは、付き合うことが前提だったり、付き合ってからのカップルが行くものという意見が大多数だろう。

 だが、私は別段、女の子と一緒にディズニーランドに行くことに対しそこまでの定義は持ち合わせておらず、ただ興味のある相手と楽しく遊べそうな場所として、たまたまそれが話題にあがったディズニーランドだったというだけであった。

 また、ちまたでいうディズニーの待ち時間で話題が持たない問題というものがあるが、それに対しても彼女とは飲みに行った居酒屋やアルバイト先での昼休憩の際など、たくさん話をする機会はあったため、その点に関してもなにも不安はなかった。


 彼女とはクリスマスは予定が合わなかったため、私はクリスマスシーズンを音楽関係の予定で忙しく過ごした。

 クリスマス気分だけでも味わおうと、ホームセンターで購入した高さ太ももくらいまでのクリスマスツリーを自宅に飾り、ライトを光らせた。


 そうしてあっという間に過ぎた12月の日々、クリスマスディズニーのイベント期間も終わった年末の12月27日、ついに彼女とディズニーランドへ行く日がやってきた。

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