第7話 従者は聖女と出会った。

 その後何日かして、城に住まいを与えられ、聖女に会わされた。


 何人かの王室使用人と一緒に聖女の部屋に通される。


 王城らしい上等なソファに座っていた少女が席を立ち、ラモン達に小走りで向かってくる。


「こんにちは!あなたが私の従者?よろしくね!!」


 聖女は藍色の瞳を輝かせ、ラモンの右隣に立っていた、老齢の王室使用人に向かって挨拶をした。

 左隣の使用人が咳払いをして言う。恰幅の良い老婦人で、見るからに面倒見がありそうだった。


「ルシア様、そちらは王室使用人のマルクスにございます。ルシア様も何度かお会いしたことがあるかと。」


 聞くなり聖女はぴしりと固まり、みるみる顔が真っ赤になった。彼女は慌てて言う。


「そ、そうよね!知ってるわよ。何度か会ったことがあるもの。これはえっと、そう。冗談よ。えっと…。」


 それを聞いてマルクスが大袈裟に言う。


「まさか。初めて城に来られ緊張しているラモン殿の緊張をほぐそうと!流石は神に選ばれし聖女様、聡慧でいらっしゃる!」


 マルクスは両手を聖女に差し出しひらひらと振った。


「も、もちろんよ。神に選ばれし私が従者を間違える訳がないものね!」


 そう言って聖女と使用人達は高く笑う。


 その光景を前にしてラモンは静かに、神などいないと確信した。


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