第17話


田中はおやという表情で神様を見た




 「神様 こんなに早く来られるとは思いませんでした」




 「清水さんはどこです」




 と相正悟




 「今から呼びに行きます」




 と田中




 「神様 約束のお金を」




 「わしは払えぬ」




 と神様




 「今さら何を」




 と田中




 「払っていただける約束です 契約書もここにあります」




 「悪いことはできぬ」




 と神様




 「私が提供する商品を手に入れるだけです」




 と田中




 「清水さんは商品ではない」




 と神様




 「お金をいただけないと私も困ります」




 と田中




 「神様 あなたはたくさんのお金を持っている」




 「ごめんなさい」




 と神様




 「反省しておる」




 




 「取引は中止だ」




 と相正悟




 「あなたには関係ないい」




 と田中




 「人間が商品だというなら 今それを聞いた瞬間から関係ある」




 と相正悟




 「それに犯罪だろ」




 と相正悟




 「人間が商品ではない、でも労働は商品です」




 と田中




 「一度 お帰り下さい神様 商品をお届けします」




 「もちろん人間ではないDVDです」




 「お金の振り込みはそれからでOKです」




 と田中は言った






 「清水さんはここにいないのか」




 と相正悟




 「いませんよ」




 と田中




 「仕事をしていただくのは今からです」




 「もしかして仕事を見たいですか 相正悟 神様」




 と田中は言った




 「うん」




 と神様は言った




 相正悟は神様を睨みつけた




 「僕も確認したいです」




 と相正悟は言った






 「ではあちらに」




 と田中が右手のドアを示した




 相正悟はドアを開けた




 そこには大きな牢屋が二つあった




 「確認してください」




 と田中が言った




 相正悟は牢屋に近づいた




 突然 田中の二人の部下が動いた




 相正悟と神様にスタンガンのようなものを押し当てた




 






 気が付くと五人は牢屋に入れられていた




 神様と信者三人で片方の牢




 相正悟は牢屋に一人きりだった




 部屋には田中一人だった




 「待っていろ 清水さんを連れてくる」




 と田中が言った





現在昼の十二時である


 


 ひらひらとした服を着た女が鶴ヶ峰の駅に向かって歩いていた


 


 色白の痩せた美女であった




 彼女は機嫌がよかった




 いい天気だったからである




 彼女は昼食をとりに外へ出てきたのである




 女の前に黒い高級そうな車が止まった




 女は気にせずに通り過ぎようとした




 車から黒いスーツを着た男が出てきた




 痩せて眼鏡をかけており 背が高い




 男は女に近づいた




 「清水さんですね」




 と男は言った




 「はい」と清水は答えた




 何かが怖かった




 「清水さん 我々はあなたに一切危害を加える気はありません」




 と男は言った




 「実は一緒に来ていただきたいのです」




 「ボスからお話がある」




 と男は言った




 「ボスですか」




 と清水は言った




 「仕事の話です」




 と男は言った




 「どんな仕事ですか」




 「詳しい話は来ていただきたい、ボスから」




  清水は怖がった




 「いやだと言ったら」




 と清水が言うと




 男は突然スタンガンのようなものを清水に押し付けた




 気を失った清水は車の中に運ばれた




 車は走り去った










清水は田中の部屋に運び込まれた




 相正悟 神様 神様の信者達 は怒りの声を上げた




 清水はふらふらである




 すぐに床に倒れこんだ




 しばらくして




 ようやく意識が戻ってきたようだ




 清水は立ち上がった




 「清水さん 手荒なことをしてすまなかった」




 と田中が言った








 清水は部屋を見渡した




 牢屋の方も見た




 清水は驚いて目を丸くした




 「神様 相正悟さん」




 そして田中に向き直って


 


 「どうなってるの」




 と問い詰めた




 田中は笑った




「すまないすまない ただちょっと神様に罰を与えたかっただけだ」




 「清水さん 私が今からあなたに一億円上げると言ったらどうですか」




 と田中




 「えっ」と清水




 少しニヤニヤして




 「どういう意味」


 


 「一言しゃべっていただければ良いのです」




 と田中




 「一言って何」




 と清水




 「神様を愛していると」




 「うそ」




 と清水




 「お金はもっと増えるかもしれませんよ ねえ神様」




 と田中は言った




 「マジならな」




 と神様




 「何言ってるんだよ」




 と相正悟




 「値段にもよります」




 と清水




 「三億じゃ」




 と神様




 「もっと多く」




 と清水




 「四億じゃ」




 「ん-もうちょっと多く」




 と清水




 「六億じゃ」




 「もっともっと」




 と清水




 「なんじゃと」




 「では七億じゃ」




 「どうしよっかな-」




 と清水




「じゃあ十億じゃ」




 「神様、あなたを愛してます」




 と清水




 「契約は成立した」




 と田中が叫んだ






 「だまされたな」




 と相正悟




 「なんだと」




 と田中




 「つまり、神様は田中さんに三億上げて 田中さんは清水さんに三億上げるということだ」




 と相正悟






 「DVDで送ってくれ」




 と相正悟は言った




  「やった-」




 と清水




 「出してくれ」




 と神様




 「DVDにはまだ撮ってない カメラには撮ってあるが」




 と田中は言った




 「自由にしてやれ 私の負けだ」




 田中の部下が牢屋のカギを開けた




 五人が牢屋から出ると




 田中は言った




 「金はいま現金で払おう それでいいか」




 その場にいた全員が驚きの声を上げた




 田中はソファーから立ち上がった




 そしてソファーを横にずらした




 そこには扉があった




 「まってろ運んでくる」




 田中の体がドアの中に消えていった




 田中がス-ツケ-スを両腕に抱えてきた




 ドラマで見るような奴だ




 田中は一億円入りのス-ツケ-スを二個づつ




 本当に十個持ってきた




 「由美子さんはどうなる」




 相正悟が聞いた




 「彼女に報酬はない」




 「だが相正悟お前には責任がある」




 と田中は言った




 「そうかもしれないです」




 と相正悟は言った








六人は十個のス-ツケ-スを持って外へ出た




 タクシーの運転手が外で待っていた




 二人は




 「何ですかこれは」




 と聞いた




 「十億円です」




 と清水




 二人は大変驚いた顔をした








 取り合えず六人は浅間神社に行った




 そこで清水は気前よく




 相正悟に一億円入りのス-ツケ-スを一個上げた




 信者たちにも一千万円ずつ配った






 神様は しぶしぶ田中に三億円を振り込んだ








 


神様は鬼ヶ島へ帰ることとなった




  相正悟と清水は神様を新横浜の駅で見送ることにした




 「今回もすまなかった」




 と神様




 「本当に」




 と清水




 「全くだ」




 と相正悟




 「由美子というのは誰じゃ」




 と神様




 「別れたよ というよりフラれた」




 と相正悟




 「清水さん わしのことを愛しているというのは」




 「え、みんなをすくうためのセリフよ」




 と清水




 「特にわしを救ってくれ」




 と神様




 「神様なんだから 自分で自分を救ってください」




 と清水




 「そうか」


  


 と神様は残念そうに言った




 「お元気で」




 と相正悟




 「元気でいて下さい」




 と清水




 「ありがとう」


 


 と神様は言った




 信者たち三人が頭を下げた




 神様は新幹線の中に入っていった




 信者たちもそれに続いた




 






「清水さん 連絡先を教えていただけませんか」




 と相正悟は言った




「いいですよ 連絡先位なら」




 と清水は言った

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相正悟(あいしょうご)の冒険 陶山雅司 @5229357865426789

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