封筒

私達のため息は、見事デュエットした。

千秋が、ずっと学校に来ないから。

千秋の席だけ、寂しそうに空いている。

「もうすぐ締め切りですよ?大丈夫なんでしょうか?」

修くんが呟く。みんながウンウンと頷く。

ルリもそれについて話そうとすると、幸之助君も同時に話そうとする。ルリと幸之助君が遠慮し合う。

うん、やはりこの2人お似合いだ。

みんなが笑い出す。

いつも通りの光景。でも、帰ってきたような感じはしない。覚めない夢を見ているような、そんな気分。

誰も元には戻らない。あそこの人達全員、死んだんだ。

 部室のドアがガラッと空いた。理科の、植谷先生だ。特に世話になっているわけでもないのに、どうしたんだろう。

「悪い、文芸部諸君。実は今野君から手紙が来たので届けようと思ってな。では!」

先生は封筒を置いて帰ってしまった。

正面にはボールペンで丁寧に「みんなで読んでください。」と書かれている。

今は、千秋以外みんな居る。

よし、読むか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る