便箋
綺麗な桜の絵が入った便箋に書かれていた。
「ごめんなさい。
あの小説は、書けません。
あの小説の謎解きは書けません。どんな謎解きを書いたとしても、笑顔になれないって解ったんです。だから、書けません。
私の小説には、必ず名探偵が出てきます。謎を解く名探偵が。彼らは絶対に真実を話すんです。
でも、解りました。あの日、ホッとしたような顔の人達をバスの中から見た時、自分は恐れるような顔よりも笑ってくれるような顔のほうが欲しいと思ってしまったんです。
私は、全ての謎が解けています。」
ここまで読んだ時、みんながざわざわした。
ルリが呟く。
「え、じゃああの時の言葉は⋯。」
あの、「全部、解った。」って言葉は⋯。
全員が一斉に「え――――――!!!!!」と叫んだ。
それから続きにはこんな事が書かれていた。
「あの事件ですが、あれは、自殺です。ほら、フックにロープがかかった三角小旗のないガーランドみたいなものってありましたよね。」
みんながウンウンと頷く。
「あれは落ちないようになっているので、それを使って首を掛けて走るんです。その後、2人来ます。まず、ロープから外します。そしてビニル紐を置いてそれっぽくするんです。もちろんちゃんとそれっぽくなるかは計算済み。あの跡いくつか調べたんですけど、ビニル紐は指紋がなかったようですね。それは、マニキュアを塗ったからです。マニキュアを塗れば、指紋もビニル繊維もつきません。でも、化粧ケースなどには指紋がついてなかった。
ゴム手袋をしたんです。それも清掃員用の。そしてどこに捨てたか。清掃員が使っているゴミ捨て場とかじゃないんですか?そしてそれっぽくするためにビニル手袋を置いた。
刑事さんは『死なないでください。』と言いました。あれをお願いしたのは私です。
もしかしたら、グルであるという罪悪感で自殺するかもしれないから。
この話は、あの少女の父親と刑事さんには話しました。そして、誰も捕まえないようにと。だから、グルの人は絶対に言う気はありません。
部長さん、私の推理小説にはこう書いてください。
『答えは解りました?解ったら、作者からのコメントは一つ。行ってらっしゃい。』
なんとしてでも、お願いします。」
ボンヤリとしていた。
そんなことだったの?え?訳が分からない。え?
混乱で頭がいっぱいになって何も言えなかった。
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