第29話 『出口のないロータリー』

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──あなたは、“ぐるぐる同じ場所を回ってる”感覚を覚えたことはありますか?


「今日は、内定祝いのドライブで、奇妙な交差点に迷い込んだという学生さんからの投稿です」

「送ってくれたのは、大学4年生の男性。夜のドライブで体験した、出口のない交差点の話です」


【DM本文より】――


大学4年の春、就職活動が終わり、内定も無事決まった。

その夜、友人2人と「就活お疲れ会」と称して深夜のドライブに出かけた。


夜道を走っている途中、Bがふと口にした。

「この辺、地図だと“ロータリー交差点”があるらしいけど、今どきそんなのないよな?」


軽いノリでその場所へ向かった俺たちは、やがて“問題の交差点”に差し掛かる。

確かに円形の構造だったが、街灯が少なく、妙に静まり返っていた。


1周して出口を探すが、道がどこにも繋がっていない。

曲がっても、また元の交差点に戻ってしまう。


気づけばスマホのGPSはグルグルと回り、現在地を見失っていた。

時計は0時52分で止まり、スマホすら反応が悪くなっていた。


そのとき、カーラジオが突然切り替わり、知らない“相談番組”が流れ始めた。


──『今夜、3人のうちの誰かが、降ります』


助手席のBが無言になり、運転していたCが叫ぶ。

「ふざけんなよ! なんなんだよこれ!」


車内のBluetoothが勝手に音楽を流し始める。

しかも、それは“逆再生”だった。

音程が下がり、歌声は歪んで、声ともつかない低音に変わっていた。


パニックになりながらも、俺が半ばヤケでその音に合わせて歌う。

それにBとCも続く。


まるで合図だったかのように、

車内に女の声が響いた。


──『出口はこちらです』


次の瞬間、目の前が一瞬だけ真っ白に光った。

気づいたときには、朝日が差す国道を走っていた。

時計は朝5時18分。

スマホの録音アプリには、逆再生された“歌声”が、しっかり残っていた。


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【検証配信】


水島は投稿者が送ってきた音声ファイルを再生する。

スピーカーから流れるのは、何かの楽曲が逆再生されたような、低く歪んだ音声。


「この音、よく聞くと……言葉になってる部分があるんです」


コメント欄がざわつく。

『さっき“やめて”って聞こえた』

『たすけて、って言ってない?』


水島は、投稿者のルートを地図で追いながら続ける。


「問題のロータリー交差点ですが、現在の地図では確認できません」

「ただ──10年以上前の古い地図には、確かに存在していた痕跡があるんです」


水島はロータリー構造が“事故多発”のため封鎖された過去を紹介する。

「これは、過去の記憶に“迷い込んだ”のか、それとも何かの“残留構造”だったのか」


最後に、水島はこう締めくくる。


「“今夜、誰かが降ります”という声──

あれは、もし誰かが気づかずにドアを開けていたら、

あるいは誰も“歌わなかったら”、

いまこのDMは、届いていなかったかもしれません」


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《動画コメントより(抜粋)》


👤ロータリーって怖い

昔、地元のロータリーでも事故多発して封鎖されたことあった。記憶に残りやすいらしい


👤逆再生の歌=合図?

もしかして“向こう”と通信するための歌だったのかな……


👤誰かが降ります

この言葉、めっちゃ怖い。電車のアナウンスみたいだけど、意味が違いすぎる……


👤似たような体験

友達が山道で同じ道ぐるぐるして、後部座席に“知らないやつ”が乗ってたって話思い出した

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