第27話 『自動保存される名前』
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投稿動画『自動保存される名前』視聴数:118,540回
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──あなたのスマホの連絡先、全員を“本当に”知っていますか?
「今回は、スマホに勝手に登録される“名前”にまつわる少し不気味な話です」
「送ってくれたのは、都内で一人暮らしをしている20代の男性。
日課としてスマホの整理をしていたときに、妙な連絡先を見つけたそうです」
【DM本文より】――
「連絡先を整理していたら、“〇〇(僕の下の名前)からみたひと”という登録がありました」
「番号は知らない携帯番号。アイコンも画像もなし。もちろん自分で登録した覚えはありません」
「削除しても、翌日にはまた復活しているんです」
「しかも“登録日時”を確認すると、いつも深夜3時前後。
僕はその時間、必ず寝ていて……スマホにも触れていません」
「怖くなって、履歴を何日か取ってみたんですが──
毎回、登録時刻は決まって3時台。番号は同じで、名前も同じ」
「もしかして何かのウイルスかとも思いましたが、他の挙動は一切なし。
……もし可能なら、この番号にかけてもらえませんか?」
──
【検証配信】
「今回は、投稿者さんと電話がつながっていますので、まずは直接状況を聞いてみましょう」
水島がスピーカーに切り替えると、投稿者の声が配信に乗る。
『はじめまして、◯◯です。よろしくお願いします』
落ち着いた低めの声に、コメント欄では『優しそうな声』『話し方が丁寧』と流れる。
水島がいくつか質問をし、登録の経緯や再発の様子を本人から直接聞き取る。
そのやり取りで視聴者は、投稿者の声を自然と覚えていく。
「では、その番号に今からかけてみます」
水島はスマホを画面に映し、問題の連絡先を表示する。
そこには事前に登録した、「◯◯からみたひと」という名前と、番号がある。
「発信します」
スピーカーに切り替え、発信音が鳴る。
……1コール、2コール──。
最初は完全な無音。
だが3コール目のあと、呼吸のような微かなノイズが入り始める。
「……聞こえますか? これ」
その呼吸音は徐々に近づいてくる。
そして、突然──
『……みてるよ』
と、落ち着いた低めの声に
コメント欄が爆発する。
『今の声、DM投稿者本人だよな?』
『事前に聞いた声と全く同じ』
『“からみたひと”ってそういう……?』
『録音じゃなくて、今喋ったみたいに聞こえた』
水島は深呼吸し、通話を切る。
直後、スマホ画面を確認すると──
連絡先の名前が「◯◯とみられているひと」に変わっていた。
「……これは、ちょっと嫌な変化ですね」
水島は画面を伏せ、配信を終了した。
──
【後日談】
検証から2日後、投稿者から追加の連絡が入った。
スマホのカメラロールに、見覚えのない写真が1枚だけ保存されていたという。
写っていたのは、暗闇の中で光を反射する人の目──顔全体ではなく、目元だけ。
撮影日時は、検証配信の当日の深夜3時12分。
つまり、通話から数時間後だった。
投稿者はその後も連絡先を削除し続けているが、
毎晩3時になると、必ず再登録されているという。
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《動画コメントより(抜粋)》
👤たけるのスマホ
名前の変化怖すぎ。“からみた”から“とみられている”って、立場が逆になってるじゃん
👤3時の法則
毎回3時台に登録って完全に意図的じゃない? 時間まで支配されてる感ある
👤自分の声は無理
電話から自分の声聞こえるって、録音でも怖いのに今リアルタイムって何?
👤目の写真
目元だけ撮られてるって、それもう部屋の中で撮ってるよね?外からじゃ無理だよ
👤しずかパターン
“みてるよ”って言葉、AIスピーカーの“しずか”の回思い出した。同じやつだったらヤバい
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