第26話 『最後に見たはずの人』
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──あなたは“もう会えないはずの人”に、会ったことはありますか?
「今回は、事故で亡くなったはずの友人に、再び会ったという男性からの投稿です」
「送ってくれたのは、20代の会社員。地元に住む、同級生の男性だそうです」
【DM本文より】――
「久しぶりに地元の友人・健太と飲みに行きました」
「昔話をして、駅前で別れて、それぞれの家に帰ったんです」
「その二日後、別の友人から連絡がありました。
“健太が事故で亡くなった”と」
「最初は冗談だと思ったんですけど、ニュース記事も見つけて……間違いなく本人でした」
「飲んだ翌日、夜遅くに車にはねられて、そのまま……」
「通夜にも参列しました。顔も見ました。間違いなく、健太でした」
「でも、それから数日後──仕事帰りに駅前を歩いていたら、前方に健太がいたんです」
「マスクもしてなかったし、服もよく見える距離。
後ろ姿も歩き方も、間違いなく健太でした」
「慌てて追いかけて、“おい!”って声をかけたんです」
「すると、健太が振り向いて……笑いながら、こう言ったんです。
その笑顔は、酔った夜に見た時よりも、どこか…温度が低くて──」
『またこっちでね』」
「次の瞬間、駅前の人混みの中に溶けるみたいに、姿が消えていました」
──
【考察配信】
「今回は、投稿者さんが“亡くなったはずの友人”に再び会ったという話です」
「こういうケースは、都市伝説や心霊話の中でも、特に“再会型”と呼ばれるタイプに近いですね」
水島は、投稿者が送ってきた友人・健太さんの情報を簡単に説明する。
事故の発生日時、ニュース記事、葬儀の日取り──いずれも事実として裏付けが取れている。
「つまり、今回の“目撃”は、生きている可能性のある人物ではないんです」
「では、なぜ駅前で再び姿を見せたのか」
水島は、これまでに寄せられた似た事例をいくつか読み上げる。
『亡くなった母にスーパーで会い、“またこっちにおいで”と言われた』
『事故で亡くなった同級生が夢に出てきて、“そろそろこっちで集合”と笑っていた』
「特徴的なのは、“こっち”という言葉です」
「“向こう”ではなく“こっち”。生きている私たちから見れば、向こう側を指すはずの存在が、あえて“こっち”と言っている」
コメント欄がざわめく。
『方向感覚おかしくない?』
『“こっち”って、あっちから見たら生者の世界じゃないの?』
『いや、向こうから見て“こっち”ってのは……つまりそっちってことでは』
『わからんけど呼ばれてる感じはする』
水島は小さくうなずきながら、静かに続ける。
「“こっち”という言葉を使う存在は、過去の回でも登場しています」
「AIスピーカーの“しずか”が言った『交代ね』も、似たニュアンスを感じる」
「もしかしたら、“こっち”は地名や方向ではなく、“状態”や“立場”を示しているのかもしれません」
「亡くなった人に会ったとき、その人がどんな言葉を残したのか──
それが、“次にどちら側に行くか”のヒントになるのかもしれません」
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《動画コメントより(抜粋)》
👤ミドリ電車
似たことあります……亡くなった同級生を駅で見て、“こっちから来たんだよ”って笑われた
👤こっち経験者
“こっち”って言われるの、自分もありました。言われた瞬間、なぜか寒気がしたのを覚えてます
👤しずか関連
AIスピーカーの“しずか”が言ってた『交代ね』って、もしかして“こっち”と同じ意味じゃないですか?
👤集合発言怖すぎ
祖父が亡くなる直前、夢で“こっちで集合だ”って言ってきたことあります。
あの笑顔、いま思い出しても背筋がゾワッとします
👤別視点の証言
動画の話と同じ日、駅前で似た人を見たって友達が言ってた……本人じゃないとしたら何なんだろう
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