第25話 『忘れられた2つ目の部屋』
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投稿動画『忘れられた2つ目の部屋』視聴数:108,721回
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──あなたの家の“全部屋”を、本当に知っていますか?
「今日は、自分の住んでいる部屋に“見た覚えのない空間”があるという投稿を紹介します」
「送ってくれたのは、ひとり暮らしを始めたばかりの男性。
都内の古いマンションに住んでいる方からのDMです」
【DM本文より】――
「水島さん、ちょっと変なことがあってメッセージしました」
「今の部屋、普通のワンルームなんです。1K、6畳。内見のときも、入居してからも、特に不思議なことはなかったんです」
「でも、ふとしたきっかけで“物件サイト”を検索してみたら、まだ僕の部屋が掲載されていて」
「そこに載っていた“間取り図”が……おかしいんです」
「洋室の横に、小さなもう一部屋が描かれてる。倉庫みたいな部屋です」
「でも、そんな場所、部屋の中にはなかったはずなんです。少なくとも“覚えがない”」
「気になってキッチン横の壁をよく見たら、壁紙の一部に、四角い“枠”のような浮きがあって……
指でなぞると、まるでそこに“扉がある”みたいな感じなんです」
「不動産屋に電話したら、『倉庫? ああ、ありますよ』って軽く返されました」
「でも、自分では正直、怖くて開けられません。
もしよかったら、水島さんに見に来ていただけませんか?」
──
【実地検証配信】
「今回は、投稿者さんの“部屋の中にあるはずのない空間”について、
実際に現地に向かって検証することになりました」
水島のカメラが映すのは、築年数の経った低層マンションの外観。
続いて、薄暗い内廊下を抜けて、投稿者の部屋の前に立つ。
インターホン越しに軽く挨拶を交わすと、投稿者がドアを開ける。
室内は、内見写真と同じく、何の変哲もないワンルームの空間。
だが──キッチン横の壁に、確かに壁紙がわずかに浮いている箇所がある。
水島が指でなぞると、わずかな“段差”が確認できる。
「……ここが、例の“間取り図にだけある部屋”の位置ですね」
水島が壁に耳をあてた瞬間──コメント欄がざわつく。
『今、カタッて鳴ったよね?』
『あれ絶対“壁”じゃない。中に空洞ある音』
『見た目は壁なのに、中に空気あるの怖い』
水島は手のひらでコンコンと軽く叩く。
音は、石膏ボードのそれではない。木のような、もっと“扉に近い感触”だった。
「このタイプの壁紙……昔のアパートだと、もともとの扉の上に後から壁紙を貼ってるだけということもあります」
水島は、工具を使って慎重に“枠”の縁をこじ開けていく。
──カチ。
薄く張られた板が外れ、中から現れたのは小さな木製の扉だった。
扉にはノブがある、鍵がかかっている
「……投稿者さんの言うとおり、“倉庫”にしては妙な構造ですね」
「外側に鍵穴がないのに鍵がかかっているというのは、“外から閉じ込める”設計じゃない。“中から閉じこもる”構造です」
水島が耳を近づける。
──そのとき、マイクが拾う。
『……シュ……シュ……』
人の呼吸音のような、かすかな寝息。
まるで、扉の向こうで“誰かが眠っている”かのように。
コメント欄が一気に騒然となる。
『聞こえた……寝息だ……』
『本当に誰かいる!?』
『今、動いた気配しなかった!?』
『開けたらいけない気がする』
水島は扉のノブに手をかける──が、開かない。
まるで、“向こう側から押さえられている”かのようだ。
その瞬間、扉の下の隙間から空気がふっと動く。
そして、“中で立ち上がるような気配”。
水島は凍りついたように手を離し、深く息を吸い込む。
「……配信、いったん止めます。申し訳ない、これは……危ないかもしれません」
──画面がブラックアウトする。
その後、水島は無事に帰宅し、
投稿者も当日はそのままホテルに宿泊したため、怪我や被害などはなかった。
だが、翌日戻ってきた投稿者が見た部屋には、あの“扉”が完全に消えていた。
壁紙を剥がしても、下には“綺麗なコンクリート面”が出てきただけで、
昨日確認した“段差”も“枠”も存在しなかったという。
さらに奇妙なのは、不動産サイトに掲載されていた“間取り図の画像”も差し替えられていたことだった。
小部屋の記載はなくなり、“通常の1K”のレイアウトに修正されていた。
投稿者が不動産会社に再度連絡したところ、
「そちらの倉庫はもともと塞がれているので、開くはずないですよ?」と曖昧に返されたという。
その数日後──動画を観ていた視聴者の一人から、こんなDMが水島に届いた。
「自分も昔、似た間取りの部屋に住んでました」
「そのとき、夜になると壁の奥から“寝息”みたいな音が聞こえたことがあります」
「でも、今改めて間取りを見たら、図面にその部屋の記載が消えてました……おかしいですよね?」
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《動画コメントより(抜粋)》
👤団地育ちのババア
これ昔住んでたアパートにもあった。使ってないはずの物入れから人の気配がしてた
👤寝息やばい
壁の向こうで誰かが“生きてる”ってのがリアルで怖すぎる……
👤圧倒的閉じ込め感
内鍵だけって、外から開けさせない設計でしょ。じゃあ入ったら出られないじゃん……
👤記憶消されてただけ?
その部屋、実は投稿者が昔いたとかそういうやつ?思い出す前に閉じられた?
👤しずかも“中にいた”のかも
あのAIスピーカーのしずかって、“倉庫にいた”存在とかじゃないよな?じわじわ繋がってる気がしてきた
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