あお

 俺の日々はただ電気を通すだけ。

 通したくて通してる訳じゃないのにな。

 そんなとき。

 いつも通る少年が来た。

 いつもうつむいている少年は、まるで水上のアメンボのように足を引きずりながら歩く。

 痛いのか、辛いのか、学校に行きたくないのか。

 分からないが、どうすることもできない。

 でも今日はいつもと違った。

 いつもより暗かった。

 下を向き、きらきら光るものを目から滴しながらひたすらに歩いていた。

 一言吐いてしまうだけで中身が出てきてしまうような。

 そんな危うさを感じた。

 空は相変わらず。

 電気も変わらず。

 なのに少年だけは、昨日と違っていた。

 嬉しい?

 悲しい?

 分からない。

 分かりたくない。

 まだ、俺は俺でいたいのだ。

 だからすまない。

 すまない。

 すまない少年。

 歩いていく少年を私は、見逃す他なかった。

 世界は少年をこんなにも照らしているのに、少年の顔は暗い。

 涙は光っているのに、その主は暗い。

 背中は青で守られているのに、上はこんなにも蒼いのに、どうして。

 碧じゃ、あおじゃ、この少年を救えないのだろうか。

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