山奥の一つの小屋

学生初心者@NIT所属

山の秘密

「本当にやるの?」


「やるに決まってんじゃん!」


 そんな夏のある夜。肝試しに向かった二人。

 別に幽霊の噂があった訳ではないが、親の子供の頃の話を聞いたりしてやってみたくなった和樹に連れられ、康太も肝試しをさせられることになった。


「それにしても暗すぎるって。」


「大丈夫だよ。何もないから。」


「ほ、本当に?」


 そうやって、近くにある山に入っていった。



 といっても、何かある訳ではなく、風によって鳴る草の音にびっくりするようなことはあったけれども、何事もなく終わろうとしていたときに、コンクリートの壁のようなものが見えた。


「きっと建物だぜ! いってみよう!」


「も、もういいよ。何もなく終わらせようよ。」


「なんでよつまんねぇじゃないか。行くぞ!」


 そういって、一つしかない懐中電灯を奪い取り、コンクリートの壁が見えた方へ向かっていってしまった。


「ま、待ってよ。それないと帰れないよ〜!」


 仕方なく追いかけてみると、そこにはコンクリートでできた小屋があった。


「おいおい、小屋じゃないか!」


「もういいでしょ。帰ろう?」


「いや、この小屋を探索しよう。何かあるかもしれないだろ?」


「少なくとも今じゃないって。」


「今やるから意味があるんだって!」


 そういって、扉を開けてしまった。


「なんかすんなり開いたな。」


「すんなり開いたからなんだよ。」


「いや、開きにくかったら使ってないかもしれないから、自分たちのものにできそうじゃん。」


「ええ? こんな山の中なんて使いたくないよ。」


「なんでだよ。秘密の小屋。かっこいいじゃん!」


 そう言いつつ、小屋の中に入っていく。おもちゃのようなものが散乱していて歩きにくく先に進みにくくなっている。


「こんなにもおもちゃがいっぱいあるのに綺麗で使えそうだな。本当に秘密の小屋にピッタリじゃん。」


「そうかもだけど、綺麗すぎるでしょ。誰かが使ってるんじゃない?」


「だったらこの状態にはならないだろ。」


「そうかもだけど。」


 そうして、掻き分けながら奥に進んでいくと、木で出来た梯子があり、それは、上の階に架けられていた。


「こんなにも行きにくい場所に2階があるだって!」


「行かないよね?」


「何言ってんだよ。冗談のつもりか?」


「は〜。もういいよ。」


 そう、諦めながら、登っていくと相変わらずものが散乱していたが、その奥には、白い物体が見え隠れしていた。


「なんかあるぞ!」


「嘘でしょ。」


 それに興奮した和樹は急いで掻き分けていき、その先にあったのは、


「ほ、骨。し、死体?」


「え、嘘でしょ。」


 頭蓋骨だけが紐に何故かくっついている、死体があった。


「どうなってるんだよ。なんでこんなのがあるんだよ。」


「も、もう帰ろうよ。」


「そ、そうしよう。」


 そうして帰り始めて、梯子を降りると、不気味なカタカタとした音が聞こえてくる。


 その音を聞いた二人は走り去っていき、この肝試しは終わった。



 数日経ち、和樹は再び、様子を見たいと思い、一人でその場所に向かったが、小屋があったはずの場所は、一つの花束が添えられてはいたが、更地となっていた。

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