第3話 アルレインの作戦

 日本がまだ元和げんなの元号だった時代、宇宙からの侵略者しんりゃくしゃが広島県にあたる地区にちた。

 侵略者の名は大邪神オルノア。それを追ってか大善神ソルヴィアが地球の大地に立った。

 まだ福山城の築城が開始前の頃である。

 地球までの飛来が消耗した両者であるため、かなりの体力低下の中での死闘。

 ソルヴィアは宇宙へと封印するはずだったが、それは叶わなかった。

 元和の町人にソルヴィアの血液を分配するためカプセルを託した。

 そして、相打ちによる両者共々封印され終焉しゅうえんを迎え、このまま姿はどこへやら消失した。


 太古の文献ぶんけんを現代に再現やアレンジして記述した人物がいる。それが、財都ざいと悠平ゆうへい。あの時の初老男性のことだ。

 オーパーツ誌記者の有森ありもり里津子りつこと面識があり、大邪神と大善神研究室まで設置した彼女が、彼の事務所まで急遽きゅうきょ訪れた。

 事務所内はベッドの代用のソファをリクライニングマットに展開して少年を寝かしていた。

 少年。それは、広島の福山城博物館を壊した怪物と戦った『巨人』に入っていた戦士だったのだ。


「こ、こ……ここは?」

「起きたかのう? もう6時間ぶっ通し眠ってたぞ」

「なぁんだ。あの妙にリアルなバトルは夢か。まったく変な悪夢だったよなぁ」

「夢とはこのことかのう?」


 ちゃっかりバトルシーンをブレはあるが撮影記録のスマホ動画が少年の手前で流れた。


「なんで、夢の中身がスマホから映ってんだ? ああ、これもまた夢なのね」


 と、少年は壁に向かって体当たりした。


「い゛だ〜〜い゛」

「何やってんだぁ、お前さんは?」

「痛い夢は夢じゃない……? てか、マジで俺は怪物を倒したり手ごわいライバルと戦ってたのか?」

「あれだけ暴れるように戦ったんだ。覚えてる方が凄いものさ。申し遅れたな。ワタシは財都悠平。いにしえの文献マニアしてるオッサンだ。よろしくな」


 そして、ようやく雑誌の美人記者が到着したという。


「あの事件の近くで渋滞だったのよ。自己紹介しますわ。あたしはオーパーツ誌写真資料部所属の有森里津子。よろしくね」


 少年に近寄る里津子だった。


「あなたを調べたわ。あなたが片主衛朱君ね。まだ可愛い盛りねフフフ」


 衛朱は顔を赤らめた。大人の色香にまどわされたからだ。


 1615年〜1624年の元和時代、大阪、夏の陣の頃。

 宇宙は、異星からの2大勢力が地球に巻き込んだ歴史上刻まれていなかった史実。

 オーパーツ誌の女性記者や、歴史文献学の学館長をしてる男性が興味津々になるのは言うまでもなく分かる話だ。


「あっ、あの家は帰れるか 俺?」

「ここら一帯の住民はシェルターライフよ。どこもかしこもね」

「つまり、ここが借りぐらしになるとか?」

「なんだ坊やはここが嫌なのか? ぜいたくは言うもんじゃない」

「違うって。バスの皆んなが心配なんだよ」


 インタビュー受けたクラスメイトや教師の中継が、広島ネットニュースボックスで、オンライン配信された端末にかじりついた衛朱。それを持つ両手がガクガクと震えだす。


「やっぱりだ……タケが、タケマサがあの怪物の口に飲まれたんだ。ちっくしょう!」

「坊や……大丈夫だ。彼の事は我々が後で身内にご報告しよう」

「お願い……頼み、ます。ウウウウウウ〜」


 オンラインニュースが流れた事で、空気が重くのしかかった。が、いつまでも沈んでる訳にはいかないと、気持ちを入れ替えた衛朱だった。


「さてと……いつまでもこうしちゃいられない。敵のアジト見つけて、こんな侵略の戦いを止めないとな」

「戦うとしても、攻略は……対策はあるのかい、坊や」

「今は、敵からやってきてるだろ? なんとか撤退する所をストーカーしてやるんだ。こんな計画はちょっと無謀だけど、今はそれしかないんだ」


 里津子は衛朱に記者なりのヒントを届け出した。


「エージュ君、追尾するなとは言わない。でもね、戦力温存せず、もし敵にバレたら蜂の巣に遭うわよ。どうする?」

「温存方法? そうか……気を反らすんだ。ありったけの注意を引くような物で引きつければな。そうすれば、勢力を減らせるかもな。我ながらグッドアイデア!!」

「敵をまぎらわすには大量の爆発物的なのが必要か? ワタシの知人に爆発物取り扱いの専門がいるが、調達できるかどうか」

「ザイトのおっちゃん、頼むよ。指をかじってる場合じゃないんだ。実行に移さなきゃ、地球は奴らのいいように扱われる」

「そうだな。じゃ、善は急げだな」

「わたしは、そうね、皆んなご飯の用意しておくわ」

「そういや俺、腹ペコだったな〜」

「あらら〜ン」


 と、ユウヘーは大コケしたのだった。


 三人が食事を摂取してる途中。

 オンラインニュースから中継が来た。


「皆さん、ご覧ください。福山の都市一帯の上空です。何やら空中軍隊でしょうか? 敵と思われる飛行物体がフォーメーションを組んで飛翔してる様子。我々も緊急避難しましょう。それでは中継を終わります!!」


「ヤバいぞ。俺、あそこに行かなきゃ。おっちゃん、車出せる?」

「別の社員のだからなぁ」

「わたしが運転するわ。エージュ君を近くまで送るわ。おじ様はここで待機していて。大丈夫だから」

「そうだな。年寄りは待っていよう」

「ごちそうさま。じゃ、腹はふくれたし、奴らに一泡吹かせてやろうじゃないか」


 そして、衛朱は里津子に現場まで送迎され、飛行物体が到着した地点で無差別攻撃しだした最前線へ向かった。


「奴らめ〜。 ハデに暴れやがってよっ!! いくぞっ 来い! 掣装 ヴァスナー!!」


 巨人は天の向こうから降り出し、少年手前に召喚された。


「こいつが……ヴァスナー? 驚いたぜ。よろしくな、じゃ行くぞっ ヴァスナー掣着せいちゃく!!」


 少年を吸引した巨人は操作室へ送り込んだのだった。


「ようし!! ヴァスナー、さっさと片付けようぜ。目的地はすぐそこだ。行けー!!」


 巨人のヴァスナーは攻撃現場へと早速向かっていった。


 輸送機らしきものにのったアーデラが以前の敵だと見つけて、攻撃を掛けた。


「現れたな、謎のバイオセーバーめ〜。オレの可愛いバイオセーバー、ホルグモーン、やってしまえ〜」


 胴体がチョココロネ形態のクモのような六本脚の怪物……ホルグモーンがヴァスナーと対峙しだした。

 クモの糸攻略でまた動きが取れなくなった衛朱。


「うわあああああ〜っ!!」


「そこだ、ホルグモーンよ、そのままソイツのノドブエをかっ切ってやれ!!」


 何か武器は……エージュの脳内に天の声が響いた。


(カタス・エージュ。おまえが強く願えば、ヴァスナーはそれに答えてあげよう、さぁ、脳に浮かんだ武器を召喚せよ)

「武器を召喚……ようしっ、行くぞヴァスナー」


 ヴァスナーの手元に刀剣類らしきものが出現、くうを浮いていた。


「ヴァスナー、ナイトファングソード。さあ、その剣を手に取れ」


 巨人の右腕が挙動し、刀剣類を手にした。


「剣を構えて振りかぶれ!」


 アーデラがおびえ、更に指示を出した。


 「な、なんと……ホルグモーン、何やってる、ヤツを倒せ!!」


 糸が切断され、自由になったヴァスナー。

 衛朱は必殺技を言葉にした。


「今だ、喰らえ〜ヴァスナー、ファイヤーウルフストライク!!」


 怒りの稲光が刀剣類に伝わり、それがファイヤーウルフストライクのスキルとなって切り刻んだヴァスナーだった。

 敵ホルグモーンの胴体が真っ二つに割れ、フィニッシュが決まった。


「我がホルグモーンがあああああ〜。チッ、今回は撤退だ。次こそ謎のバイオセーバーをやっつけてやる」


 敵側の空中輸送機的な乗り物が引き返した。しかし、今回はストーカー計画はないから、敵のアジト探しはやらずにいたのだ。


「見事だ。頑張ったなヴァスナー」


 一部始終をビデオ撮影した里津子。流石は記者魂を持つバリバリなワークレディー。


「エージュ君、ありがとう。貴重なデータはここに収まったわ」


 掣着の解除で操作室から外に出た衛朱。


「リツ姉〜!! 俺、やったぜ」

「ご苦労さま、エージュ君……えっ、ナニ!?」

「ン? リツ姉、どうしたんだよ。いったいさぁ」


 里津子の身体の自由が利かない。その右手のハンディビデオカメラが自然に宙に舞い上がった。

 すると宙に浮いた人物像が出現。それの正体は人間でいう青年の姿だった。


「こいつはもらっていく。地球人の知恵を把握すれば、この鉄くずなど解析できよう。さらばだ。謎のバイオセーバーを操る小僧。フフフフフフ……」


 その青年は……誰であろう、アルレインであった。

 ビデオカメラを手に取り、彼は城都へと帰還したのだった。



 

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