第2話

「じゃあ、また来るね」


また来るんだって心でツッコミを入れながら、また来てねって少し寂しそうな笑顔で返す。

いつも通り軽くキスをして、彼は玄関を出て行った。


「ふぅ…お風呂入ろっかなぁ」


独りになった部屋で呟きながら布団のシーツを剥がして洗濯機に入れる。

消臭剤はお気に入りのホワイトティーの香りを振りかけて、新しいシーツを被せた。


明日は木曜日だから、そろそろお風呂に入っても良い時間。

あと2日あるしお風呂沸かそうか考えながらソファに座って携帯を開く。

そのとき、ちょうど着信がきて携帯が震えた。


「…もしもし?」

『もしもしー?朱莉、今暇??』


暇…ではないかもしれない。


「うーん、お風呂入る前くらいかな」

『じゃあ暇か。良かった』


何も聞いてないなと思いつつ、いつも通りの会話にツッコミも諦めた。


「どうしたの?なんかあった?」

『いや、声聞きたくてさ』


彼は2年間付き合ってる彼氏。佐野恭弥。

2年経っても声が聞きたいと言ってくれるのだ。悪い気はしない。


「えー?言うて昨日も電話したじゃん笑」

『そうだけど、電話飽きた?』

「んーん、そんなことないよ」


そうやっていつも20分くらい他愛もない会話を繰り返す。

さっきまで他の男とセックスしてたなんて、当たり前に恭弥は知らない。

罪悪感が無いのかなんて、野暮なことは聞かないでほしい。辞められるなら辞めたいと軽い気持ちで思っている。




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満たされたいから、愛されたい @panachip___000

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