満たされたいから、愛されたい

@panachip___000

第1話

多分、これまでの人生は人並みに好かれてきた方だと思う。

よく言えば順風満帆、悪く言えば–––波風立たない人生。


だからこそ少しの刺激は求めても悪くないよね。

短い人生なんだし…。


なんて思いながら私の横で寝ている彼のほっぺをつついてみた。

私、金田朱莉は今不倫している。

彼改め松山悠平は、私の会社の元上司。今は別の部署だけど、1年前までは彼と同じチームで働いていた。


彼には立派な家庭があって、帰るべき場所がある。


「もうそろそろ帰らなくて大丈夫ー?」


帰りを待ってくれている人がいるのに他の女の家でセックスして、この人はなんて贅沢なんだろう。

瞼を重たそうに開いた。


「…もうそんな時間?」


只今の時刻21:36。4歳の子どもがいることを考えると、かなり"そんな時間"。


「そんな時間でしょう。早く帰んないと奥さんにまたチェーンかけられちゃうんじゃない??」

「あー…そんなこともあったっけ……帰るか」


チェーンかけられたことをそんなことって思えるなんて、ある意味羨ましい。なんで奥さんはこんな人が良かったのか。

私が心底疑問に思ってるのと同じくらい、きっと奥さんも毎日思ってるんじゃないだろうか。


まぁそれでも、私はこの不倫で得られる優越感という名の快感を手放せないでいる。

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