第4話 非選定因果、黒衣の少年

 


夜のアーク=セントリア。

蒼く輝く浮遊街路を、ひとりの黒衣の少年が静かに歩いていた。


彼の名は霧島 紅蓮(きりしま ぐれん)。17歳。

叶翔とは正反対に、未来の“選ばれなかった側”の因果を体現する存在だった。


 



紅蓮の瞳は冷たく光る。

彼の中には「非選定因果(アンセレクト)」と呼ばれる力が宿っていた。


それは、“選ばれなかった未来を現実に引き戻す”禁忌の能力。


叶翔が未来を「選び、確定」する一方で、紅蓮は“消え去った可能性”を復活させ、世界を混沌へと誘う。


 



「俺たちがいなければ、未来は1つにならない。だがそれは…閉塞だ」


紅蓮は闇の中、静かに呟いた。


「俺は、選ばれなかった世界の声。忘れ去られた未来の叫びだ」


 



その頃、叶翔は学院の図書館で、封印されし因果律の書を紐解いていた。


“非選定因果”の存在を初めて知った彼は、恐怖と決意を胸に刻む。


「これが、俺たちの戦いの始まりか……」


 



突然、図書館の扉が激しく開いた。


そこに立っていたのは、セレス――しかし、その瞳はいつもとは違い、鋭く光っていた。


「翔、危険よ。紅蓮が動き出した」


 


 



紅蓮は一人、静かな呪詛を唱える。


「すべての選択は無意味だ。

未来は自由に分散すべきだ。

俺が、混沌を呼び覚ます」


 



――こうして、2人の選定者による、未来をめぐる壮大な戦いが幕を開けた。


世界の因果律は、今、揺れ動き始める。

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