エピローグ:全の果て、そして始まり

世界は再び息を吹き返した。

運命律は再構築され、今は「選び続ける意思」によって成り立っている。


神も、人も、魔も、すべての存在が“何者かに定められる”のではなく――

自らの意味を選ぶ時代が始まった。



中央神域。かつて“オムニタイム”が発動された神の座。


その最上段に、静は立っている。

もはや戦うことも、裁くこともない。

“神の力そのもの”となった彼女は、ただ世界を包み込む“存在”として在る。


「力なんて、本当はいらなかったのかもしれないわね」

微笑む彼女の傍らに、レティアが寄り添う。


レティアは力を持たずとも、静を制御する唯一の“鍵”。

今やその存在は“絶対神”として、静を、そして世界の理を律する。


「でも、それでもあなたがここにいることが、きっとみんなを救ってる」

「……ありがとう、レティア」



その下、神域の階層を下りた現世。

蒼は人々と共に暮らしていた。


全因律を統べし超能力者――世界を選び直した少年は、神ではなく、

“人の側”に立つ守護者として歩むことを選んだ。


農村の復興に協力し、魔法学院で後進を育て、

ときには静やリリスと語らいながら、ただ「生きる」ことを尊んでいる。



「姉さん、世界は今……いい感じに混沌としてるよ」

空を見上げて蒼が言う。


その空には、雲が流れ、星が瞬き、風が吹いている――

かつての運命律の時代では許されなかった、不確かで自由な空だった。


終わりなき“全”の物語は、

いま、“始まり”の場所に帰還する。

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