第8話 こぽっ

 余裕がないというと、学校の図書館に回す予算を削らないといけないくらい、余裕がないのかなぁ、この市は。

 ないんだろう、と思うけど、図書館なんてそんなに予算使わなさそうなものだけど。

 本買ってるだけなんだし。

 それとも、その本の値段が高いのかな?

 いや、たしかに高校一年生にとっては本は高いけど……。

 けっきょく、その図書館なんとか会には、自分が出ることになるのかな?

 いいけど。

 いまは何も思いつかないけど、その場に出たら、その場で考えついたてきとうなことは言えるだろう。そして、そのてきとうなことというので十分なことが多いのだ、この世のなかは。

 この世のなかなんてよく知らないけど、美聖自身のまわりは。

 考えが、蟻のいる地面からもうちょっと高いところに戻った。それで顔を上げる。

 目の前には柳の木、その向こうには小さい川が流れていて、その向こうは田んぼだ。黄緑色の稲が同じくらいの背の高さで向こうまで広がっている。そのまた向こうにはため池があったかな?

 柳の木陰は涼しそうだが。

 ここまで木陰は届いてくれないので。

 したがって、ここは暑い。

 しまった。

 いろんな、「暑い」以外のことをずっとがんばって考えてきたが、ついに考えが「暑い」に戻ってしまった。

 ああ、と、大きく息をつく。

 息をついて、何かの緊張が緩んだのだろう。

 こぽっ。

 つづいて、ずん、と体にこたえる衝撃!

 えっ?

 何この感じ?

 いきなり太もものところがぎゅっと強く絞めつけられて、背中に何かが強く当たってぐりぐりして、それに、見えているところがさっきと違うんだけど……?

 さっきまでまぶしくてしようがなかった空が、いまはなぜか暗く見える。

 何を考えていいのかわからない。いや、わかるとかわからないとか考える余裕がない。

 苦しい!

 「苦しい!」というのは「何この感じ?」への答えだ。おなかの筋肉まで痛くなってきた。

 何が起こったのだろう?

 このお尻の……と思ったところで正解がわかった。

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