5回目の引越し
引っ越す前に、いじめられていた男の子に告白された。
彼が好きになったのは、私ではなく、彼の状況を変えた「何か」だった。
私はいじめが許せなかっただけで、その子を助けたかったわけではなかった。
自分勝手で情けないけれど、自分の気持ちに嘘はつきたくなかった。
5回目の引っ越し先は東京だった。
最悪だった。
東京では、協調性の大切さと、出しゃばらないことを学んだ。
転校初日、「ドイツから引っ越してきた」と伝わったことで、クラスメイト全員が私をドイツ人だと思い込んだ。
我が強く、思ったことをなんでも言ってしまう私の性格が、クラスメイトを刺激した。
何度も否定したが、その性格のせいで、なんでも「ドイツ人だもんね」と嫌味を言われるようになった。
唯一仲良くなった琴音とは、親友にはなれなかった。
お互いに一緒にいる人がいなかったから、一緒にいただけだった。
琴音に、私が裏で「ぶりっ子」と呼ばれていることを教えてもらった。
媚びを売らず、なんでも正直に伝える私にはまったく似つかない陰口で、思わず笑ってしまった。
不幸中の幸いで、東京には7か月しか住まなかった。
今、なぜか、小学一年生の頃のことを思い出した。
そこら辺に落ちている枝が、翌日になると場所を移動しているのが不思議で、「ちくちくへび」と名付けていた。
否定してくる男子に「ちくちくへびはいるんだよ」と怒り、
一生懸命考えて作った、たくさんの種類のちくちくへびが載った手作りの図鑑を自慢げに見せていた。
女子たちは一緒に遊んでくれた。信じていなかったかもしれないけれど、一緒に枝を集めて、ちくちくへびを保護してくれた。
私も心のどこかでは、ちくちくへびなんかいないと分かっていたけれど、もう後戻りはできなかった。
針だけ残った ぽちこ @g___r_y
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