3回目の引越し
記憶があるのは三回目の引越し ドイツ ヒュルト から。
家が前の家族から引き継がれる時、私は瑞希と出会った。彼は私と同い年で、電車に詳しかった。私にマインクラフトを教えてくれた。ほぼ毎日電話を繋げて遊んだ。これは小学六年生まで続いた。
私は小学二年生の柔らかい頭のお陰でドイツ語を習得し、現地の学校にすぐ馴染んだ。
仲良くなったのはトルコ系の女の子とドイツ人の女の子、リナ。
トルコ系の女の子の名前は覚えていない。彼女との思い出は、水筒を飲んでいる時に底を押されて、口を怪我した事くらい。
リナとの思い出は彼女の家の芝生で駆け回っていたら蜂を踏んでしまって足の裏を刺された事。
小枝が刺さった様な感覚がして足裏に目をやった。黄色いものが苦しそうにもがいている。それを手で払ったら黄色いのは消えて、黒い針だけが残った。
独りでに刺さっているその針を見た瞬間に私は泣き喚いた。ちぎれたトカゲのしっぽのような、死んでいるのに役割を果たそうと必死に生きているそれが受け入れ難かった。
今思えばリナの庭ってだけで、思い出には自分だけだ。
ヒュルトを離れた後は、一、二通だけ手紙を送り、彼女の声を忘れてやめた。
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