第2話 NYでお買い物。~語学が役に立つ。
柴崎さん、おはよう。
おはよう。
柴咲美咲は、新聞を折りたたみながら、
私に答えてくれる。
私は、朝食をテーブルに置きながら、
「いい。外出日和だねぇ。」
「そうね。出かけるの?」
「うん。ちょっと買い物に。」
・・・。
?
「佐藤さん、大丈夫なの?」
「大丈夫って?」
私が、にっこり笑いながら、
聞き返すと、柴咲はため息をつく。
「昼間のNYなら大丈夫かな。
すりだけには気をつけなさいよ。」
「そうだね。」
私は、朝食を食べて部屋に戻ると、
白いブラウスに、フレアースカート、
それから、ジャケットを羽織り、
バックを持つと、NYの街へ歩き出した。
歩くと言っても、伊能商事のフラットは、
かなり街なかに作られていて、
すぐに私は、ウィンドーショッピングを
始める。
Pという1つのブランドの前に立って、
生唾をコクンと飲み込み、
意を決して、店内に入っていった。
腰の低い店員さんが、寄ってくる。
カフスリンクスを見せて欲しいとの
旨を伝えると、
すぐにこちらにと案内してくれて、
私は、ソファに座らされた。
ええと、私はなんでここに座って
いるのかな?
他のお客様は、そんなこと無いみたいだけど。
ま。いいか。。。
さっきの店員さんと、ジョークを交えながら
雑談していると、テーブルの上に、
色々なカフスリンクスが、並べられた。
お薦めを聞いてみて、そのお薦めの中から、
4種類のカフスリンクスを選び出す。
プレゼントなのでと伝え、お願いしている間も、
先程の店員さんと話していると、
どこかで会ったことがある男性が話しかけて
きた。
「佐藤様。ご無沙汰しております。」
「えっと。」
「表参道の店舗の店長をつとめておりました、
佐々木でございます。
先月より、NYの店舗の店長になりまして。」
「そうでした。佐々木さん。お久しぶりです。」
笑って談笑していると、先程、話していた
店員も目を丸くしている。
佐々木店長が、苦笑している。
静かに談笑していると、
表の所で、もめているのかなんだか騒がしい。
この声…。柴咲さんじゃないかなぁ。
どうやら、英語に苦戦しているようで。
うーん。
「ちょっと行ってきますね。
佐々木店長。録画してある防犯動画を
用意したほうがよいかもですよ。」
「かしこまりました。」
私はソファから立ち上がった。
後ろから静かに近づいていって、
話を聞いていると、店員がなにか、
やらかしたことらしいことは分かった。
しかも、店員の話す英語は、仏語なまり。
これでは英語が得意な柴崎さんも無理だな。
「柴崎さん。」
「佐藤さん。どうして。」
「目立っていますよ。ちょっと奥に
行きませんか。」
「あなたも。」
あたしは、店員に仏語で話しかけ、
奥へと誘った。
柴崎は、あっけに取られている。
先程のソファにあたしと柴崎は座った。
ちょっと待って下さいね。
そう言い終わらないうちに、佐々木店長が、
動画のDVD-Rを持って、中に入ってくる。
「店長が持ってるDVDが何を映している
かしら?」
そう、仏語で言うと、柴崎を応対していた
店員は顔から血の気が引いて、
顔がひきつっている。
「心当たりはあったようですね。
佐々木店長、あとは宜しくお願いします。」
「かしこまりました。」
「じゃ。柴崎さん。付き合ってあげたい
んだけど、私、もう少し買い物しなきゃ
いけないから。
あとは、そこの佐々木店長と相談してね。」
「あ。ありがとう。」
「何いってるの。同僚の仲じゃないの。」
「佐々木店長、後のことお願いします。」
「お任せ下さいませ。」
私は、紙袋を受け取り、店を後にした。
私は、今日じゃなきゃと思っていた
買い物を済ませて、フラットに戻る。
夕食を食べていると、あたしの前に、
ケーキの箱が置かれた。
「ん?」
「佐藤さん。」
「柴崎さんお帰りなさい。大丈夫だった?」
「ただいま。。ってそうじゃなくて、
佐藤さん?あなた、何者なの?」
「私は私以外の何者でもないけど?」
「どうして疑問形?」
「あれ。そうだね。」
「佐藤さん面白い。。。」
私は、微笑んでみせた。
「その分だと、取り返せたみたいね?」
「うん。ありがとう。すごく助かった。」
「良かった。
「ところで、佐藤さん、仏語話せるのね?」
「そうね。」
「あとは何語話せるの?」
「英語。仏語。スペイン語。中国語と…。」
「と?」
「今は、ドイツ語勉強中。」
「すごいわ。びっくりした。」
私はフッと笑った。
「確かに良く、言われてるよね。」
私は、知った声に振り向く。
「なんで、ここにいるの?」
「うん?ちょっと用事があって。」
「昨日、裕之に電話したらさ、
頼まれちゃって。」
「頼まれる?」
「佐藤の様子、見てきてだって。」
「心配性?大丈夫だよ。」
「ならいいけど。あんた無理するから。」
「言い訳できません。」
「あの。。。」
類は、その声に振り向いて、
笑って言った。
「宮下類です。ええと、柴崎さん?」
あたしは、びっくりする。
プライベートでは特に、
あまり、ありえない光景。
柴崎は、目をまんまるにして、
しどろもどろに答える。
「はい。柴崎美咲です。」
「佐藤が、お世話になってます。」
「ちょっと!」
「今日、私がお世話になっちゃって。」
「そうなの?」
類が、私の顔を覗きこんで、
問うてくる。
「俺、NY来てから、とある店に行ったんだ。
そしたらさ。表参道店に居た、佐々木さんが
いてね。」
キカナクテモ、知ってるんじゃん!!
私は、ちょっと膨れてにらんだ。
類は、人差し指で、あたしの膨れた頬を
ツンツンつついてきた。
「あんまり色々と、顔突っ込まないでよ。」
「だって!」
「ほっとけなかったんでしょ。」
そうなんです。
「でもね。海外では特にね。駄目だよ。」
「はい。」
「わかったならいいけど。」
ドアの近くから、秘書が遠慮がちに
話しかけてくる。
「類様そろそろお時間が。」
「わかった。」
「佐藤。」
首を傾げる私に微笑み、
「来月俺、日本に一時帰国するから。
その時に、デートしよ。」
「なんでデート?」
「佐藤はうるさいの来ると、色々吐き
出せないでしょ。」
「そうだけど。」
「じゃ。帰国したら連絡する。何かあったら、
電話よこしてよ。」
「うん。そうする。」
類は軽く手を挙げてあわただしく、
仕事へと戻って行った。
「佐藤さん。」
「何でしょう。」
「花沢さんとは、どういう…。」
「うーん。友達?」
「友達とはデートしないでしょ。」
「うーん。あたしの一部?」
「はい?一部?」
「それについては秘密ってことで、
とりあえず、ケーキ食べようよ。」
「わかった。」
ティーサーバーを借りてきて、
紅茶を煎れている間に、
柴崎は、ケーキを開けてくれる。
「紅茶、どうぞ。」
「ありがとう。」
一口含んだ途端に、柴崎はびっくりする。
「美味しい。」
「ありがとう。紅茶好きな人に鍛えられた
んだ。」
「そうなんだ。」
「紅茶は、外国のお水でいれる方が
美味しいなぁ。」
「佐藤さん、外国行ったことあるの?」
私はニコッと笑った。
「ケーキ、美味しいね。ありがとね。」
「こちらこそ、お店ではお世話になりました。」
「いえいえ。」
「そういえば。明日は、テーブルマナー
だっけ?」
「そうだねぇ。できればパスしたいなぁ。」
「どうして?」
「堅っ苦しいの。苦手なの。」
「ああ。そういうこと!私も同じだわ。」
「しかも、明後日はパーティもあるでしょ。」
「それもねぇ。。。」
「「ドレスアップしなきゃいけない。」」
柴崎さんとは、合いそうかも?
二人は、同じ言葉を言った。
そして、あははと笑いあった。
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