第3話 NYで食事研修会。
私は、自分の部屋で、食事研修会の準備を
していた。
西本さんから茶会を手伝ったお礼にと
貰った黒のワンピースとヒールのある靴。
前に類にプレゼントしてもらった、
真珠のネックレスとイヤリング。
もう少しで季節だから良いかな?と思って、
これも前に伊能さんに誕生日にと
貰った、チューリップのブローチ。
それから、まだNYは朝夕肌寒いから、
NYのあいつからもらった、首元には
大判のスカーフ。
あとは、バックを持って、化粧も済んだし。
よし、これでいいかな。
確認していたら、ドアがノックされた。
はいと返事をすると、萩原ですと同僚の名前。
今日の食事研修会で、あたしをエスコートする
ことになっている、萩原君。
ドアを開けて、とりあれず挨拶をする。
「萩原君、お迎えありがとう。」
「佐藤?」
一目見た途端、荻野くんの目がまんまるに
なってる。
私は、部屋の鍵を掛けて、待っている
萩原君が差し出した腕に、腕を絡める。
こんなところは、さすが美作商事に務めてる
人なんだなって思うんだ。
エスコートなんて、あまりできないもんね。
「そのドレス素敵だね。」
「ありがとう。私も気に入ってるんだ。」
「ところで、今日研修場所が変わった。
らしいよ。」
「何処に?」
「詳しくは知らないんだけどさ、
どっかの財閥のダイニング貸切とかなんとか。」
なんかすごく嫌な予感がするんですけど。
玄関で待っていた車に乗り込むと、
そこには、美咲ともう一人の同僚鈴木が
乗っていた。
美咲と鈴木も、聖美をみてびっくり
している。
その間に車は走りだし、15分後についたのは、
やっぱり、NYのあいつのお屋敷だった。
私は、小さくため息を着く。
「なんでこうなるかなー。」
「え?」
「なんでもない。これは研修会だものね。」
「そうだけど、何かあるの?」
「無ければ御の字!」
そとから、運転手さんがドアを開けてくれて、
差し出さられた手を素直に取り降りると、
そこにいたのは、類だった。
「類?!」
「仕事終わらせてトンボ帰りしちゃった。」
「大丈夫?つかれてない?」
「飛行機のなかで寝てきた。」
「そっか。」
「あ。そうだ。萩原くん。」
「きちんと創が準備してくれてたよ。」
「良かった。」
「俺たちも入ろう。」
そう言って、類は、手を差し出す。
うん。私は、萩原君の時とは違う、
安心感がある。
「ネックレスしてくれてるんだね。」
「うん。ありがとね。」
「そうそう。伝言。
明日のパーティ、課題が終わったから
行くから。」
「言っとくけど、佐藤に会いに来るんだよ。
会いに来るっていうか、パートナーだな。」
「なにそれ。」
「佐藤のパートナーを、新人君に
やらせたくないだけ?」
きょとんんとする私。
「止めようっても、止められないよね。」
「ああ、無理だな。」
類にエスコートされていくと、
美咲がほんのり、顔を赤くしている。
私達は、微笑みあって、類が椅子に、
スムーズに座らせてくれた。
類は、隣に座る。
まるでそれは、類と食事に行っている
みたいで、
私は、緊張せずに、美味しい料理を
堪能できたんだ。
「そういえば。類。」
ん?と言う感じで、顔を寄せてくる。
「やっぱり、翔太忙しいんだね。」
「俺らでも滅多に、電話が通じないよ。」
「みんな頑張ってるんだね。」
「ん。」
「ところで、なんで翔太の自宅になったわけ?
予定は、メープルのレストランでしょ?」
「うん。それで、ダブルブッキンがどうの
こうのって、昨日耳にした。」
「それが翔太の耳に入ったらしくて、
俺のとこでどう?って打診してくれたって、
裕之が言ってたけど?」
「そういうことなのね。」
コースを最後まで食べて、あたしはやっと
ナイフとフォークをおく。
すると、自然に給仕の方が来て、
スマートに片付けてくれて、
デザートとコーヒーをお持ちします。
と言って、下がっていった。
小さな声で、類と話していると、
コーヒーとデザートが運ばれてきた。
あたしは、お皿を置かれてびっくりする。
その様子を見て、給仕の人は微笑んだ。
小さく、多めにと思いまして。
そしてその時私はやっと気づいた。
給仕の人は、あたしがいつも道明寺の家で
ご飯をごちそうになる時に、付いてくれる
人だった。
「ありがとうございます。」
「佐藤。良かったね。」
「うん。」
ゆっくりとデザートを食べていると、
同期のみんなも、デザートまで行き着いた
ようで、今回の先生達が、各テーブルを回って、
成績表を渡して歩いた。
ドキドキするなぁ。
大丈夫だよ。
と言って、類がクククと笑う。
渡されたカードを、そっと開けてみてみる。
「わっ!」
私はびっくりして大きな声が出てしまった。
「五月蝿いよ。佐藤。」
「ごめん。びっくりしちゃった。」
類も、カードを見て、キレイな笑顔を
見せてくれた。
「へ~、99点ってすごいね。
原点1点は何?ええと。
豪快に食べてたから。」
類は、ブッと吹き出して、
「あはははは。」
と、聖美にひけを取らない大きな声で、
笑った。
「ちょっと類!」
「ごめん。佐藤らしくて。ぷぷぷ。」
「もうっ!」
私は、プッーと膨れて、類をひと睨みして
俯いてしまう。
その様子に、膨れた頬をツンツンしつつ、
類は、覗きこんで囁く。
「そんな顔の佐藤、かわいいよ。」
私は、類に覗きこまれて、可愛いと
言われて、真っ赤になってしまった。
「佐藤。」
「何、横溝類。」
「今日の食事研修会、楽しかったね。」
「そうだね。久々に類とゆっくり食べれて、
話もできて、楽しかった。」
「良かったね。」
帰りは横溝家の車に乗せられて、
フラットへ向かった。
「おやすみ。またね。」
「おやすみなさい。次は東京?」
「朝言った通り一度、日本に戻るよ。」
「その時に会えるかな。」
「予定調整しとく。」
類は、私の額にキスを落として、
手をタッチさせて、聖美はエレベーターに
乗った。
横には、美咲が乗っていて聞いてくる。
「ねえ。佐藤さんって、横澤さんとも仲が
いいの?」
「うんそうね。仲がいいけど。」
「そうなんだ。」
あたしは、それ以上は答えないと
言う目をして、
美咲にニッコリ微笑んだ。
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