第7話 お前らしいな

2024年10月29日


兄貴が家に帰ってきた。


家族4人が揃うのは久しぶりのこと。


1人暮らし、結婚していればなかなか集まる機会も無いだろう。


「ご飯どれぐらい食べれる?」


父親のいつもの問いかけ。


父親は専業主婦だからよくご飯を作ってくれてた。


「いっぱい」


「同じ」


兄貴といつもの答え。


懐かしい。


違うのは母親のご飯の量だけ。


いつもの3分の1ほど。


食べるのも体が辛い。


ただ、


「味薄い」


味覚は健在。


兄貴と爆笑。少しガックリする父親。少ないご飯を食べる母親。


机を囲み、家族で食事をする。


色褪せることのない、キラキラした宝物がそこに生まれた。


「帰る前にまた写真撮ろうか」


元カメラマンの父親が本格的なカメラを準備していた。


ポジションを事細かく説明し、納得のいった父親がタイマーをセットする。


カメラのフラッシュが眩い。


目を瞑らないように気を付けながらレンズに視線を送った後写真を確認。


カメラの液晶には兄貴と母親と父親の笑顔と


母親のウィッグを被って変顔をするオラがいた。


「なんやこれ、まぁお前らしいな」


父親が満足そうにカメラの電源を切る。


今でもその写真を見るとこの日のことが鮮明に蘇る。


それにしてもほんとに変な顔してるな…

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