第8話 感情を抑えること

2024年10月30日


「また来るね」


母親と父親にそう言って家を出て自宅へ向かった午前中。


電車に揺られふと入院していた病院や街並みを眺めていると


涙が自然と溢れてきそうになった。


母親と出かけた街が懐かしく感動した、


という訳ではなく、


ただただ何か大きい寂しさがあふれ出てきた。


もう一緒に歩くことは出来ないのかな。


もう一緒にお買い物には行けないのかな。


もう一緒に出来たことが出来ないのかな。


あまりにも出てくる「出来ない」


電車の中で深く帽子を被り直し、涙を堪え、


通り過ぎるそれをただ眺め、感情を抑えることに必死だった帰り道は


とても辛く長かった。

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